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Tue, 03 December 2024

第270回 ロイド・レジスターと海の記念日

シティ南部のフェンチャーチ・ストリートにロイド・レジスターという船級協会があります。ロイドといえば、17世紀終わりにエドワード・ロイド氏のコーヒー・ハウス店で保険証券の引き受けが始まり、それがロイド保険に発展していった話を連想する人も多いと思います。そのとき重宝されていたのが店内で配布されていたロイド・リストです。そこには等級分類された船の詳細情報や関連する海運情報が掲載されていました。

船の風向計が付いたロイド・レジスターのロンドン本部 船の風向計が付いたロイド・レジスターのロンドン本部

当時コーヒー・ハウスの顧客は、やがて保険の対象となる船舶や装備を検査するための公正、かつ独立した機関の設立を望み、1760年に世界初の船級協会、ロイド・レジスターが誕生。するとさらに保険ビジネスに参入する投資家が増えました。その中にジョン・ウォルターという商人がおり、シティで石炭商をやっていた父の家業を引き継ぐと共に、石炭運搬船の保険証券をたくさん引き受け、大きな成功を収めていました。

ジョン・ウォルター氏 ジョン・ウォルター氏

人間、成功するとさらに欲が出てきます。ジョンは国内の石炭運搬船だけでなく、海外の巨大な貨物船の保険証券も引き受け始めました。ところが米国独立戦争や暴風雨の不運が重なり、82年に破産。そこでジョンは考えを改めます。今までロイド・リストをみて自分が保険リスクを負ってきたが、これからはロイド・リストを制作する側に回り、保険リスクは専門家に任せようと。そして突然、出版・印刷業に転身したのです。

1740年の
ロイド・リスト 1740年のロイド・リスト

ブラックフライアーズにあった旧王立印刷所を買収し、文字単位ではなく、語句単位で植字するロゴグラフィーという新しい印刷技術を導入しました。また、ロイド・リストを制作するだけでなく、海外特派員を派遣して海外情報の充実した一般紙「デーリー・ユニバーサル・レジスター」という新聞を85年から発行し始めました。その3年後、その新聞は「タイムズ」紙と改名され、現存する世界最古の日刊新聞、「タイムズ」紙になりました。

 1785年に創刊された現在の「タイムズ」紙 1785年に創刊された現在の「タイムズ」紙

一方、海運の発展と共に船級協会が各国で設立されました。船級協会が発行した証書のない船は海上保険を受けられないといっても過言ではありません。ちなみにロイド・レジスターの船級証書を初めて受けた日本の船が1875年に就航した明治丸です。グラスゴーで製造された日本初の鉄製の蒸気船で、明治天皇が北海道と東北を行幸される際のお召し船となり、横浜に帰港した日が同年7月20日でした。これが日本の「海の記念日*」の由来です。海はいろいろな所でつながっていますね。
*1996年から7月第3月曜日を「海の日」に変更

 現在、明治丸は東京海洋大学で展示 現在、明治丸は東京海洋大学で展示

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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