第101回 ダーウィンがやって来た!
2ポンド硬貨の話が続いて恐縮です。釣銭の中で見つけてうれしいのが、チャールズ・ダーウィンの硬貨。彼の生誕200年を記念して2009年に造られたものですが、猿とダーウィンが向き合う硬貨を眺めていますと「お互いに似ているなぁ」と思わずニヤリ。
2ポンド硬貨に地下鉄の刻印
10ポンド紙幣には肖像画だけでなく、彼が乗った探検船ビーグル号やハチドリも描かれていますが、今年9月から作家ジェーン・オースティンに差し替えられ、こちらの図柄は早晩、「絶滅」してしまいます。
10ポンド札にはもいるビーグル号やハチドリ
さて、ダーウィンは裕福な家庭の生まれで、父は医者、祖父も医者で地質学者、母方の祖父は陶芸業のジョサイア・ウェッジウッド。ところが彼の学業成績は振るわず、医者への道を断念。そんな彼の人生を変えるきっかけが、大学の恩師で鉱物学者のジョン・ヘンズローとの出会いでした。ヘンズローの紹介で海軍の探検船ビーグル号に乗船する機会を得て、しかもその航海中にチャールズ・ライエルの「地質学原理」の熟読を勧められます。
地質学と生物学を結ぶのは化石(写真は始祖鳥の化石)
その少し前、地質学会では大変なことが起きていました。当時の英国は産業革命が進展して炭田開発や石炭運搬のための運河開発が盛んでした。地質学が英国で発展したのも、地下資源を効率的に採掘・配分するために地層の研究が進んだからです。そんなとき、運河の測量技師ウィリアム・スミスが登場。彼は深い地層ほど古く、同じ地層には同じ化石が発掘されるという「地層同定の法則」を発見、英国全土の地質図を完成させました。
ウィリアム・スミスによる英国の地質図
この地質図が公開された1815年、地質学会はスミスを冷遇しました。でもライエルら若い地質学者が学会の主導権を握るようになると名誉復活。またライエルが著作で主張した「斉一説」、地質の現象は時代を超えて同じ自然法則に従って起きるという考えが近代地質学の礎になりました。この考えは、神が天地を創り、天変地異により生物が創造されたという聖書の教えを否定します。
ダーウィンの手記による系統樹は縦書き
ダーウィンが航海から戻り、その観察結果を斉一説を取り入れて書いたのが、「種の起源」です。何千年、何万年という単位での自然環境の変化に応じて生物がいかに適応してきたか、適応しなければ絶滅するのが生物の掟。彼の手記では、生物の変化の系統図が左から右ではなく下から上に描かれ、地質学者の片鱗を伺わせます。思えば、寅七のいる金融市場はゼロコンマ何秒の世界。億年単位で物事を考えないと大物になれませんね。
ダーウィンが結婚後に住んだロンドンの自宅は、ロンドン大学の生物学教室に