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Fri, 29 March 2024

第74回 「騎馬像に秘められたメッセージ」

旧王立取引所前にあるウェリントン公爵の騎馬像。シティでは軍人を崇拝するような像を公衆の面前に建てることが禁止されていますので、軍服ではなく平服です。彼がロンドン・ブリッジ周辺の道路整備をしたことが銅像建立の理由ですが、この像はナポレオン軍から奪った大砲を溶かして作られましたし、ワーテルローの戦いで勝利した6月18日の記念日に除幕式をしましたので、平和主義を前面に出すには少し気恥しいような気がします。

東インド会社クラブ
勝利の報が伝えられたのは当時の商人邸、現在は東インド会社クラブ

この像、よく見ればウェリントン・ブーツを履いています。当時は子牛の革製で、ゴム製の長靴が作られるのは約40年後のことです。馬とゴムといえば思い出すのが獣医のジョン・ダンロップ。馬は腸が長いのでガスが腸にたまる病気にかかりやすい。ダンロップは息子の三輪車の車輪が壊れた際、その修理中に馬の病気を思い出し、車輪に巻いたゴムに空気を入れます。それが世界初の空気入りゴム・タイヤが誕生した瞬間となるのです。

ウェリントン公爵の騎馬像は4つの足が地につく
ウェリントン公爵の騎馬像は4つの足が地につく

さて、この騎馬像から100メートルほど南西にあるのがロスチャイルド銀行。同銀はナポレオンとの戦争支援のため、ネットワークを駆使して金塊をウェリントンに送り続けました。その資料室を訪れたとき、19世紀前半に実際に使われていたという伝書鳩の通信文を見せてもらい、急に東インド会社クラブを訪れたくなりました。なぜならそこはワーテルローの戦いでナポレオンを破った勝利の第一報が国王に届けられた場所だからです。

有名なウェリントン・ブーツ
有名なウェリントン・ブーツ

西ロンドンに位置するセント・ジェームズ・スクエアは、17世紀末に造られた貴族の住居地区です。この16 番地で行われた晩餐会に出席していた摂政王太子(後のジョージ4世)に勝利を告げる伝令隊が到着したのは、1815年6月21日午後4時過ぎ。どんなに早く馬や船を乗り継いでも戦勝の日から3日かかりました。ところがロスチャイルドはその2日前には情報を入手していたと言われます。誰よりも早く入手できたのは馬ではなく伝書鳩のおかげだったというわけです。

ウィリアム3世の騎馬像
は片足を上げている
ウィリアム3世の騎馬像は片足を上げている

振り向けば広場にはウィリアム3世の騎馬像。ロンドンの騎馬像は、馬が両足を上げていれば乗馬者は戦死、片足なら不慮の死、4つの足がついていれば自然死を表わすと言われます。冒頭のウェリントン公爵の馬は4つ足をついていますが、ウィリアム3世の馬は片足を上げ、足下にモグラ塚もあります。彼はその塚につまずいた馬から落ちた怪我が原因で死去しました。たかが騎馬像、されど騎馬像。様々なメッセージが読み取れますね。

拡大すればモグラ塚
拡大すればモグラ塚

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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