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Sat, 23 November 2024

第64回 神様からのメッセージ

聖ポール大聖堂の南西側に「ファラデー・ビルディング」が立っています。ここには16世紀初めから19世紀半ばまで教会法や大陸法、海事法を研究する施設「ドクターズ・コモンズ」がありました。教会や海外からの難解なメッセージをそこで読み解いていたのです。20世紀になると英国初の電話交換局に変わり、1980年代に移転するまで英国最大の電話交換局として内外からの無数のメッセージを繋ぎました。

上がマーキュリーの像、下にカドュケウスの杖
上がマーキュリーの像、下にカドュケウスの杖

ここの正面入口には、ローマ神話のマーキュリーと彼の杖のカドュケウスが飾られています。マーキュリーは神様のメッセンジャーとされ、商売や旅人、お遣いの守護神でもあります。カドュケウスには長寿と知恵の象徴であるヘビが2匹絡まり、空を翔ぶ羽も付いています。神様のお遣いには素早さと賢さが必要ということでしょう。この杖の意匠は、イングランド銀行や旧王立取引所など、シティの建物には多く見られます。

カドュケウス
イングランド銀行玄関口のカドュケウス

そうそう、マーキュリーには水銀の意味もあり、黄金を製錬する錬金術には欠かせない貴重な金属でした。実は、日本の弘法大師(空海)の錫杖(しゃくじょう)も水銀と関係が深いのです。彼は水銀の効能を唐で学び、辰砂(しんしゃ)(硫化水銀)を採鉱して丹薬や顔料を作り、当時のハイテク技術だった鍍金(ときん)(金メッキ)を導入しました。錫杖で地面を叩いてそのときの反響音で水銀鉱脈を識別したのですから、神様からのメッセージを読み解いていたと言えます。

弘法大師と錫杖
弘法大師と錫杖

さらに水銀で思い出すのが水銀式温度計。ドイツ人医療器具職人のガブリエル・ファーレンハイトが1714年に作りました。気温はまさに神様からのメッセージです。それを正確に伝えるのが水銀というわけ。彼の名を中国語読みすると「華倫海」になるので、彼の温度目盛りが華氏になる一方、1742年に温度計を改良したスウェーデンの天文学者アンデルス・セルシウスが「摂爾思」になるので、彼の温度目盛りは摂氏と呼ばれます。

華氏と摂氏
華氏と摂氏の表示がある温度計

両氏に先駆け、温度計の原理を発見したと言われるのが科学者ガリレオ・ガリレイ。その原理は、外温が変わると内側の液体の密度が変わり、浮き沈みする球体で温度を知らせるというものです。寅七はクリスマス・プレゼントでこの原理を用いた温度計をもらいました。華氏と摂氏の温度表示が、ふわふわ、ゆったりと神様からのメッセージとして届けられてきます。皆様にも未来からの心優しいメッセージが届きますよう、どうぞ良いお年をお迎えください。

ガリレオの温度計
ガリレオの温度計がふわりと室温を伝える

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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