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Sat, 23 November 2024

第18回 All We Need is £ove

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日本ではお年玉の勘定をしているころでしょうか。今日はイングランド銀行と紙幣のお話をしようと思います。当地の通貨はスターリング・ポンドと呼ばれるのに、なぜか、通貨記号は「£」。これは古代ローマの重さの単位リブラに由来します。リブラとは「天秤」のことで、もともと1リブラが1日に必要なパンの小麦量でした。英国ではその重さの銀を通貨単位にしたのです。「£」の横線は天秤棒を表すので水平でなければいけません。

また、銀行紙幣には「本券の持参人には○○の金額を払うことを約束する」というイングランド銀行出納課長の約束文言と署名があります。出納課長さんの署名は既に何十億枚以上ものお札に署名されていながら、かつ、皆さんが普段からお目にしているにもかかわらず、その存在に気が付く人はほとんどいないでしょう。

実はこの文言、中世時代の金銀の預かり証(=金匠手形)に由来があります。貿易が栄えて海外から金銀が流入しますと、シティの商人は安全に保管するため、ゴールドスミスと呼ばれる金匠に預けるようになります。そのとき金匠は預かり証を発行しますが、これが商品取引の決済に代用されるようになりました。いちいち金銀を持ち運ぶ必要がなく、預かり証が持参人払いでしたので決済に利用できたのです。これが紙幣の原点になります。

イングランド紙幣
持参人払いを確約する文言と出納課長の署名。
現在のサーモン氏は31代目

ところで、イングランド銀行の正面玄関の鉄扉を見て下さい。そこに刻印されているのは、1688年の名誉革命の際、オランダのウィリアム3世が乗ってきた帆船だといわれます。英国王に即位した彼は対仏戦争の戦費調達のための銀行を作ろうと考えました。そこでテムズに入港する船の容積1トン当たりに関税をかける法律「トン税法」を1694年に作り、その19条に、新しく設立するイングランド銀行が発行する債務証書はこの関税で担保すると明記したのです。関税で担保される証書ならその信用は極めて高くなります。

イングランド銀行イングランド銀行が現在の場所に移転したのは
1734年。1780年に起きたゴードン暴動以来、
地階には窓がない
イングランド銀行
正面玄関扉の刻印には
ウィリアム3世の旗艦ブリル号

この証書は大人気となりました。この銀行の信用は絶大となり、金匠手形も発行され、それが紙幣に生まれ変わり、やがて中央銀行に発展していったというわけです。銀行設立以来、紙幣にはブリタニアという英国の豊穣の女神が印刷されています。ですので、通貨記号の「£」の本当の由来は「リブラ=天秤」ではなく、彼女が育んだ「愛=£ove」だったのかもしれません。いつだってどこだって、「All We Need is £ove」ですからね。

豊穣神ブリタニア
イングランド紙幣には豊穣神ブリタニア
が印刷されているが、その盾にはユニオン
ジャックではなく聖ジョージ十字が
 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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