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Thu, 21 November 2024
内田啓子ライフスタイル・ブランド
Keiko Uchida主宰
内田啓子さん

[ 後編 ] 9年務めた会社を退職し、着物柄のドレッシング・ガウンやスリッパといった商品を扱うライフスタイル・ブランドを立ち上げた内田さん。小さな会社のオーナーへと転身したことで、見ず知らずの他人にアドバイスを請い、お世話になった人にいかに恩返しできるか想像を膨らませる機会が増えていく。全2回の後編。
プロフィール
うちだけいこ - 茶室の建築を行う父親と、着物の着付け師として働く母親の間に生まれる。東京で高級キッチンのデザイナーとして勤務した後、イングランド西部バースへ語学留学。2003年にサリー芸術大学にてデザイン・マネジメントのMAを取得。同年にロンドンのMUJI Europe holdingsに入社し、その後は主に同社の生活雑貨部門を統括する業務に携わる。2012年にロンドン大学バークベック・カレッジの国際ビジネス学のMScを取得し、ライフスタイルブランドKeiko Uchidaを設立。英国各地及びパリの小売店や自身のウェブサイトなどを通じて欧米を中心に10カ国以上に商品を販売している。
www.keikouchida.com

 

膨らんでいくネットワーク

「着物の伝統美を世界中の人々と共有したい」という夢を叶えるため、いわゆる脱サラをし、ライフスタイル・ブランドを立ち上げた内田さん。「安定した会社に勤めていた方が良いと考える人も多いと思います。ただ安定性を求めるのであれば、そもそも海外暮らしを選んではいない。きっと挑戦したい性分なのでしょうね」。

それから、内田さんの挑戦の日々が始まった。リストアップした小売店にしらみつぶしに電話をかけて自身の商品の売り込みをし、展示会用に家具が必要となれば近所のアンティーク家具店に赴いて家具を格安で貸してくださいと頼み込む。デザインするだけでは、商売は成り立たない。「ブランドの認知度と販売はリンクしていて、認知度のない新しいブランドが販売力を上げていくというのは本当にタフで時間のかかる作業です。ただ幸運なことに自宅近くのロンドン西部ノッティングヒルには経営の先輩たちが営むユニークなカフェやショップがたくさんあり、初心者がアドバイスを求めるには非常に良い環境でした」。

内田さんがデザインした、着物柄の様々な商品
内田さんがデザインした、着物柄の様々な商品

ポートベロー・マーケットに程近い本屋兼カフェ「Book and Kitchen」もその一つ。いつしかこの店の経営者と懇意になり、さらにこの経営者の友人が運営するPR会社に広報業務を依頼するようになった。また展示会で知り合った同業他社や中小企業の経営者たちと情報交換したり、励まし合いながら切磋琢磨していくという形で、自身を中心としたネットワークが徐々に膨らんでいく。

ときには、競合相手になり得る人々でさえ協力の手を差し伸べてくれるのだという。クレジット・カードの読み取り機器ではどの会社のサービスが小さなビジネスに向いているか。商品の在庫を置く倉庫はどこを使っていて、どんな特典サービスを利用できるのか。業務秘密と思われるような情報まで親切に教えてくれる。「ただ自分の方から尋ねなければなりません。静かに悩んでいても有効で具体的なアドバイスは得られません」。

同時に、どうしたら相手の役に立てるかを考えることも重要だ。「いかにお互いにとってフェアで価値のある関係を作ることができるのかということは常に心に留めています。それが相手の方にも伝わって、情報交換したり、アイデアを出し合ったり、励まし合ったりというようなポジティブな関係が広まっているのかもしれません。PRの担当者にしても、PRのプロとして、また今では友人としても私のビジネスを応援してくれるとても頼もしい存在です」。

本屋兼カフェ「Book and Kitchen」を経営するムナさん(写真左端)とPRを担当するアレックスさん(同右端)
本屋兼カフェ「Book and Kitchen」を経営するムナさん(写真左端)
PRを担当するアレックスさん(同右端)

相手の目をしっかり見つめて伝える

見ず知らずの人とコミュニケーションを取る際に大切なのは、相手の都合を尊重しながらも、自信を持って話し掛けること。「謙虚」と「自己表現」は両立するというのが内田さんの考えだ。「伏せ目がちにならないように、相手の目をしっかりと見つめて話すよう心掛けています。それだけでも相手に与える印象に違いが出てくるからです」。

様々な人々と公平な関係を築くために、自分から発信し、相手の発信を受け止める努力を続ける。「英国でたくさんの文化に触れ、英語を話す世界中の人々と知り合えるというのは素晴らしいことです。このようなコミュニケーションが、私の個性や力を伸ばしてくれているように思います。今まで築いてきた関係を今後も大切にしたい」。内田さんがその一部となった網の目のような関係は、こうしてますます広がっていく。

 

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