第2回涙と笑いの大衆紙とは正反対の超高級紙
英国の新聞は大衆紙、高級紙、平日紙、日曜紙など様々な種類がある
英国にいると、新聞を手に取る機会が結構多い――読者の皆さんもそう思いませんか。その理由は無料で読める新聞が朝夕に駅構内に積まれていたり、通りで配布されていたりするからです。ロンドンだと朝は「メトロ」、午後は「ロンドン・イブニング・スタンダード」がありますよね。無料で、かつほんの20分ほどで読めますから、非常に便利ですね。
無料紙以外の普通の新聞、つまり有料紙としては、小型タブロイド判の「サン」、「デーリー・スター」、「デーリー・ミラー」など「大衆紙」と呼ばれる新聞があります。スターのゴシップ、スキャンダルなど人に焦点を当てた記事が中心で、1面の記事の見出しには笑える語呂合わせがいっぱいです。キャサリン妃が最初の赤ちゃんを産んだとき、サンはタイトルを「The Sun」から「The Son」に変えて楽しませてくれました。
日本の新聞のような大判サイズとタブロイド判が混合しているのが「高級紙」と呼ばれる新聞で、「タイムズ」、「テレグラフ」、「ガーディアン」、「インディペンデント(これのみ3月末で紙版は廃止されました)」がこれに当たります。日本の新聞の全国紙に相当するでしょう。
小型の「デーリー・メール」や「デーリー・エキスプレス」は大衆紙と全国紙の中間の存在になります。
地域別に分ければ全国紙と地方紙がありますし、発行日によって分けると月曜から土曜の平日紙と日曜のみに発行される日曜紙があります。タイムズの場合、その日曜紙が「サンデー・タイムズ」です。別冊子が複数付いて、かなり分厚くなりますよね。
発行時間によって分けると、すべての新聞が朝刊紙か夕刊紙かに分れていて、1つの新聞が朝夕に出す場合はありません。サンもタイムズも朝刊のみです。
さて、「フィナンシャル・タイムズ(FT)」はどこに位置するのでしょう?
FTは全国紙であり、朝刊紙。高級紙でもあります。でも一般紙タイムズやガーディアンとは異なるランクに位置しています。経済専門紙である上に、値段が超高いのです。例えばテレグラフは平日版が1部1.40ポンドですが、FTは2.70ポンド。紙と電子版購読のセット料金はテレグラフが月39ポンドですが、FTは54ポンドです。このレベルの金額を払える人が購読している、ということですね。
また、最も部数が多いサンの発行部数は平均174万部。FTは20万部弱です。「なんだ、これっぽっちか」と軽く見ると大間違いです。電子版のみの読者を入れると75万に増えますし、世界中の政策決定層・エリート層が読む、つまりは私たちの生活を左右する経済政策にかかわる人(政治家、経済・金融関係者)が読んでいるのですから、その存在は無視できません。
経済記事が中心のFTは報道の正確さを最重要事項としており、サンと比べると見出しや文章表現がかなり真面目な感じがします。真面目な新聞と笑わせてくれる新聞が同居するのが英国の新聞界です。
また、各新聞は決して中立ではなく、それぞれの政治姿勢を明らかにして、思い思いのことを毎日報道しています。新聞同士の競争は熾烈で、英国の新聞記者たちはありとあらゆる手段を使って、ネタを取ろうとしています。次回は、あっと驚くその取材方法を紹介しましょう。