クォリー・バンク・ミル - Quarry Bank Mill
~産業革命の遺産~
ナショナル・トラストは自然景観やカントリー・ハウスなどに代表される歴史的建造物を保護し、公開することを目的に活動していますが、今回ご紹介するクォリー・バンク・ミルはちょっと珍しい、産業革命当時の遺産、英国最大の紡績工場です。
場所は英中部にあるマンチェスター空港のすぐ近く。広大な敷地にはピクニックも楽しめるような緑地が広がり、小川からはせせらぎが聞こえてきます。ナショナル・トラストが管理しているだけのことはある、のどかで居心地の良いプロパティです。
ここは市民の憩いの場としての役割と同時に、生きた歴史を学ぶ場所としても、大きな役割を担っています。
クォリー・バンク・ミルは1784年に設立、その後1816年から1820年にかけて増築されました。ナショナル・トラストへ寄贈されたのは1939年でしたが、工場そのものは1959年まで稼動していました。
ヴィクトリア朝時代、産業革命の担い手は、奴隷やまだ幼い子供たちでした。貧しい家の子供たちは無給の見習いとして、長時間労働の厳しい環境下に置かれていました。その記録がこのクォリー・バンクにも顕著に残っています。
この工場で働かされた子供たちの多くは、救貧院から来た身寄りのない孤児たち。彼らは工場での仕事の後には、敷地内での造園作業などに従事し、1日のほとんどを休むことなく働いていたと言われています。
まるで英国版女工哀史のような悲しい歴史ですが、工場内には当時の様子が実に良く再現されています。こうした歴史の一端も、ナショナル・トラストによって半永久的に残されているのです。
私たちが絵を描くためにこのプロパティを訪れたのは、春うららかな暖かい5月のとある日のこと。緑地の一部には仮設遊園地ができていました。遠くから聞こえる子供たちの楽しそうな声が、深く心に響いた一日でした。
(文責・小野まり)
Address | Styal, Wilmslow, Cheshire SK9 4LA |
Tel | 01625 445896 (Infoline) |
---|---|
Access | 車で: M56の第5出口から約3.2キロ。マンチェスターの南、約16キロ。 電車で: Manchester Airportから約3.2キロ。 |
Open hour | 工場/ 10月末までの毎日11:00~17:00。 11月~2009年1月末は月・火曜日が休園。 |
Web | www.nationaltrust.org.uk |
< 前 | 次 > |
---|