第5回 性別判明!
英国でNHSに通う妊婦にとって、ハイライトとなるのは何と言ってもエコーだろう。何せ2回のみ(大抵が妊娠12週目と20週目)の、貴重な体験。初めてのお姿拝見となる初回エコーも感慨深いが、性別判断が可能になる2回目のエコーもドキドキものだ。性別判断は生まれるまでのお楽しみにとっておきたいと言う人たちもいるが、私たち夫婦は断然知りたい派だ。
不思議と周りは口を揃えて「和子のお腹にいるのは女の子ではないか」と言う。また、私のお腹の出っ張りは全体的に丸みを帯びているのだが、英国では「お腹が前方向にでっぱっていたら男の子、全体的に丸くなったら女の子」という言い伝えがあるそうだ。私たちもだんだんとその気になり、赤ちゃんを三人称で呼ぶときはshe を使ったりしていた、が……。
「間違いなく男の子よ!」モニターを指差しながらのエコー技師の衝撃の言葉。言い伝えはあてにならない、と心底思った瞬間であった。
男の子と判ってから、赤ちゃんに対するかすかな気持ちの変化があった。女の子だと思い込んでいた時は、特に意識しなかったのに、突然「うーん、お勉強はできたほうがいいかな」なんて思い始めたのだ。私にはどうやら「男性は頭が良い方がいい」という固定観念があるようだ。私自身、親から「女の子らしくしなさい」と言われたことはないし、どちらかと言うと「男勝り」に育ってきたのに、いつの間にかこんな性差意識が頭のどこかに巣食っていたとは、意外だった。
夫の男友達は、赤ちゃんが男の子だったと伝えると、皆一様に「ということは、将来は○○の有望選手だな!」と言う。○○は、夫がサポートするサッカー・チーム。やはり、英国の男親にとって、息子がサッカー選手になる、って夢なのだろうか。一方で、私に「将来は地方公務員か学校教師になりなさい」と言い続けてきた私の親は、突然「芸術家に育てたら?」などと言い出すからびっくり。現実的な人間も、孫に対しては夢見がちになるものらしい。