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Wed, 13 November 2024

英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

これまでに2900人以上のミリオネア誕生
英国の宝くじ当選者のその後

今月中旬、宝くじ「ユーロミリオンズ」で、イングランド東部サフォーク州在住の40代の夫婦が1億4865万ポンド(約184億円)と言う巨額の当選金を手にし、大きなニュースになった。これにちなんで、今回は、誕生から20 年近くになる国営宝くじの高額当選者のその後などについて取り上げる。

国営宝くじの種類

名前ロト(Lotto)抽選日 毎週水、土
くじの値段 1ポンド(約124円) 1等当選の確率 13,983,816分の1
ルール 1から49までの番号から6つの番号を選ぶ。3つ以上の番号を当てれば当選。
1等賞金 その回の1等の当選者の人数、前週からの賞金の持ち越しの有無によって決まる。
名前ロト・ホットピックス
(Lotto Hotpicks)
抽選日 毎週水、土
くじの値段 1ポンド(約124円) 1等当選の確率 317,814分の1
ルール 1から49までの番号から1~ 5つの番号を選ぶ。幾つの番号を選ぶかは、くじ購入者が決める。自分が選んだ番号がすべて当選番号の中にあれば当選。当選番号は、ロトと同じものが使われる。
1等賞金 13万ポンド(約1612万円)
名前サンダーボール
(Thunderball)
抽選日 毎週水、金、土
くじの値段 1ポンド(約124円) 1等当選の確率 8,060,598分の1
ルール 1から39までの番号から5つ、1から14までの番号から1つ(サンダーボール)を選ぶ。サンダーボールのみ当てると3ポンド(約372円)の賞金。
1等賞金 50万ポンド(約6200万円)
名前ロト・プラス5
(Lotto Plus 5)
抽選日 月、火、木、金、日
くじの値段 1ポンド(約124円) 1等当選の確率 13,983,816分の1
ルール ロトの購入時、更に1ポンド追加で払うことによって、ロトで自分が選んだものと同じ番号を使って、ロトの抽選がない曜日に行われる5回の抽選に参加できる。
1等賞金 25万ポンド(約3100万円)
名前ユーロミリオンズ
(Euromillions)
抽選日 火、金
くじの値段 2ポンド(約248円) 1等当選の確率 116,531,800分の1
ルール 欧州9カ国で実施されている宝くじ。1から50までの番号から5つ、1から11までの番号から2つを選ぶ。
1等賞金 その回の1等の当選者の人数、前週からの賞金の持ち越しの有無によって決まる。
Source: Daily Record ほか

英国の宝くじ高額当選者トップ5 ★★★★★

  当選額当選の年と月宝くじの種類当選者の名前、居住地
1 1億6165万3000ポンド
(約200億円)
2011年7月 ユーロミリオンズ コリン・ウィアーさん、クリス・ウィアーさん(スコットランド)
2 1億4865万6000ポンド
(約184億円)
2012年8月 ユーロミリオンズ エイドリアン・ベイフォードさん、ジリアン・ベイフォードさん (サフォーク州)
3 1億1301万9926ポンド
(約140億円)
2010年10月 ユーロミリオンズ 非公開
4 1億120万3600ポンド
(約125億円)
2011年10月 ユーロミリオンズ デーブ・ドーズさん、アンジェラ・ドーズさん(ケンブリッジシャー州)
5 8445万1320ポンド
(約104億円)
2010年5月 ユーロミリオンズ 非公開
Source: Daily Record ほか

宝くじ当選で人生が狂った人々

● 16歳の少女が2億円超当て

イングランド北西部在住のキャリー・ロジャーさんは2003年、わずか16歳で、宝くじ「ロト」で1等を当て、当選金190万ポンド(2億3560万円)を手にした。当時は、当選金を使って2年間旅行をした後、ソーシャル・ワーカーになりたいと夢を語っていたが、結局、4軒の家に車、豊胸手術や高級衣料品などに散財することに。さらには麻薬を覚えてコカインに25万ポンド(約3100万ポンド)をつぎ込み、うつ状態になって何度か自殺未遂をし、2010年には恋人の男性との間にできた2人の子供の親権を失った。その後、2012年4月に女性誌のインタビューに応え、当選金は4万ポンド(約496万円)しか残っていないが、現在は新しい恋人との間にできた双子を妊娠中であり、幸せに暮らしていると語っていた。

● 宝くじ当選で麻薬とパーティー三昧の日々

2001年4月、ウェールズ・カーディフ市の裁判所で、元英海軍のエンジニアの男性(当時30)に、麻薬の所持や他人への提供などの罪で1年の禁固刑が言い渡された。男性は、2000年1月に宝くじで340万ポンド(約4億2100万円)を当てた。これと同時に海軍の仕事を辞め、パブやナイトクラブに足しげく通い、ウェールズ内に買った豪邸で夜な夜なパーティーを開いて麻薬を摂取するという自堕落な日々を過ごすことになった。男性が逮捕されたのは、2000年11月、自宅でのこうしたパーティーで、参加者2人が麻薬の過剰摂取で倒れ、警察と救急サービスが駆けつけたときであった。判決の際、男性の母親はマスコミの取材に応じ、「息子は宝くじに当たるまでは問題を起こしたことはなかった。宝くじで人生を駄目にされた」と語っていた。

飲酒とストレスによる心臓発作で死亡

英国の国営宝くじは、保守党政権下の1994年に誕生した。運営は民間会社のキャメロット社(関連キーワード参照)に委託されており、また宝くじの収益金の28%は、スポーツ団体や芸術団体への補助金交付などの形で、社会貢献のために使われている。

キャメロット社によると、1994年以来、国営宝くじは、英国に2900人以上のミリオネア(百万長者)を誕生させている。しかし、宝くじの当選は、必ずしも当選者の人生を好転させるわけではなく、逆に、思いがけず大金を手に入れたことで、不幸な道を歩むことになった人々もいる。例えば、2005年に900万ポンド(約11億1600万円)を当てたイングランド中西部シュロップシャー州の男性は、2010年4月、58歳の若さで、心臓発作で死亡した。男性は、当選後、パン屋の仕事を辞め、家に車、競馬にと散財。しかし、働く必要がなくなり、時間を持て余したことで過剰に飲酒するようになり、アルコール依存症に。長年連れ添った妻には去られ、更には架空の投資の話を持ちかけられて金を騙し取られるなどしたことで、ストレスにさらされる毎日だった。男性は、死亡する前年、マスコミのインタビューで、「宝くじに当たる前は幸せだったが、当選ですべてが台無しになった」と語っていた。

また、スコットランドでは2010年1月、1997年にわずか17歳で200万ポンド(約2億4800万円)を当てた男性が、自宅で死亡しているのが発見された。29歳だった。男性は、両親に家を買うなどして当選金を使ったが、高額当選者であるがゆえに周囲の注目を集めることが苦痛になり、次第に人を避けるように。死亡する前は、出身地から離れた場所に購入した家で、「隠遁者」のような生活を送っていた。死亡を伝える記事では、男性が最近、「健康上の問題」を抱えていたと報じられていた。

慈善活動に励む高額当選夫婦

こうした悲劇的な例と対照的なのが、上記の高額当選者の表で1位になっているスコットランドのウィアー夫婦である。2011年7月に「ユーロミリオンズ(欧州9カ国で実施されている宝くじ)」で1億6165万ポンド(約200億円)を手にした夫婦は、それ以来、様々な団体などに寄付をしていることで有名である。これまで、スコットランドのサッカー・チームやカー・レーサーなどに資金援助をしており、また最近では、がんで片足を失ったイングランド北東部の13歳の少年に新しい義肢を買う費用を寄付した。夫婦は先月、慈善活動のための基金を設置中であると明かし、「宝くじ当選で最も変わったことは、意義ある方法で人を助けられるようになったこと。人を支援できる立場にあることは光栄」と語っていた。

1等当選確率は1億1653万分の1

キャメロット社が今年5月に発表したところによると、2011年度の同社の売り上げは過去最高の65億ポンド(約8060億円)に達した。不況が続く中、一攫千金を狙う人が増えている証拠かもしれないが、万が一当選しても、これまで見てきたように、その後の人生が幸せになるかどうかは保証できないようだ。ちなみに、キャメロット社によると、ユーロミリオンズで1等を当てる確率は、およそ1億1653万分の1だという。

Camelot Group

英国の国営宝くじ事業運営会社。1994年、国営宝くじ運営の委託先を決める入札に参加するため、複数の民間企業のコンソーティアムとして設置された。同年に宝くじ運営のライセンス権を勝ち取り、さらに2001年と2007年にその延長に成功している。現在のライセンスは2019年まで。2010年3月、カナダのオンタリオ教員年金基金(OTPP)に売却された。国営宝くじの関係機関としてはそのほかに、規制・監督機関である「国営宝くじ委員会(National Lottery Commission)」がある。キャメロット社のウェブサイトは www.camelotgroup.co.uk

(猫山はるこ)

 

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