生徒の校内暴力にお手上げした教師が、政府に助けを求めたことで「暴力学校」の代名詞ともなってしまったベルリン・ノイケルン地区にあるハウプトシューレ・リュトリ学校。校長が不在という状態がしばらく続いており、この間に教師への暴力や侮辱が激化。すぐ に助けを呼べるようにと、教師は携帯電話を肌身離さず持ち歩くようになったほか、校門前には警察が配置されるという事態にまで発展した。メディアはこれをこぞって取り上げ、図に乗って挑発的な態度をとる生徒らを、カメラに収めては報道していた。だが「生徒らに罪はない!」と、ベルリンで社会学を専攻する大学生、トム・ハンジンクさん(29)が同校の生徒と 協力して、Tシャツのブランドを立ち上げた。 過剰に報道するメディアによって作り上げられた学校像を払拭し、生徒自らが己を表現することで、汚名返上しようというのだ。バイエルン州出身のハンジンクさんは、ベ ルリンでも外国人が多く住むこの地区に越してきてから4年、快適に暮らしている。同学 校にまつわる問題があることは否定しないが、メディアのせいで「世間は同校の生徒について、ゆがんだイメージを抱いてしまっている」と指摘、「生徒たちは失敗した教育政策の犠牲者。彼らは方向を失ってしまっている。道し るべを作ってあげないと」と話す。そこで学友と一緒に設立したのが「リュトリ・ウエア」だ。美術の授業を利用して、生徒 らがデザインを担当。胸元に大きく「リュトリ」 の文字を入れたTシャツには、メディアの過剰報道に気後れしたり、あるいは逆に開き直ったりせず「私はリュトリの生徒です」と主張できる誇りが詰め込まれた。また企画を通して、生徒らに協調性や連帯感も生まれた。Tシャツは1枚14ユーロ。オンライン・ショップで販売し、売上金は学校に寄付される。ただでさえ就職難のこの時代、「リュトリ学 校出身」となると、どんな雇用主も相手にしてくれないという。このプロジェクトが生徒らに自信を与え、胸を張って社会へと巣立っていくことが出来るきっかけになれば何よりだ。
「Die Welt」紙 "Wir wollen keinen Ghetto-Kult" by Nicole
Dolifn