英国では今日も鳥たちが
歌の練習を行っている
野生動物の保護活動を主な目的として設立された、英国が誇る王立動物虐待防止協会(RSPCA)。同協会には、怪我などを理由として通常の野生生活を送ることができなくなった野鳥が年間4500羽も運び込まれている。これらの鳥たちをお世話係が治療しながら面倒をみることになるのだが、問題はその後。なんでも人間に保護されたひな鳥たちは、親鳥から直接生きる術を学ぶ機会を得られないため、「歌を忘れた鳥たち」になってしまうのだという。
だがオス鳥にとって、歌の修得は必須項目。彼らは歌うことで自分の縄張りを主張したり、メスを口説いたりするからだ。特に異性を惹きつけるためには上手に歌う能力がなければやっていけないようで、メスは音痴には見向きもしないのだという。才能ある者がモテるという掟は、鳥の世界にも存在するということか。ともかく歌うことができない鳥は、野生に戻されたときに自分の縄張りは守れない、異性には相手にされないで、随分と苦労することになるんだそう。
そんな悩める鳥たちを助けようとRSPCAが用意したのが、歌う能力を向上させる特別学習プログラム。「夜明けのコーラス」とも表現される鳥の美しき歌声が入ったCDを飼育所で毎日2回ずつかけることで、鳥たちによる歌の学習を奨励した。同協会で働く研究者によるとその成果は上々のようで、親代わりとなったCDの音声を真似ることで、鳥たちの歌唱力は日に日に向上しているという。「鳥たちは歌い方を学習することで、より良い生涯を築くことができるようになるのです」という専属研究者のコメントが、いかにも教室の先生っぽいではないか。
異性を惹きつけるためには、鳥でさえも相応の努力が必要とされるのだ。彼らのモテるための特訓は、今日も続く。
「The Times」紙
"Orphaned chicks taught to sing with a CD
of the dawn chorus greatest hits"
< 前 | 次 > |
---|