同じく飛行士だっ たリーゼル・
バッハ、 テア・ラッシェと並ぶ
バインホルンさん
(写真左から順に)
Sammlung, Caproni, Rom
1907年5月30日、ハノーファー生まれ。父親が一流会社に勤める裕福な家庭で、一人娘として大事に育てられた。後に回想録「Alleinflug(単独飛行)」でも語っているように、子どもの頃から大の旅行好きで、いつも未知の世界を夢見る少女だったという。
21歳の時に航空学校の門を叩く。「しばらくは泣いてばかりいた」母親を始めとする周囲の反対を押し切り訓練を開始したバインホルンさんはそれから半年後、操縦席でハンドルを握り、初めて大空に飛び立った。
1931年12月4日、午前9時。エレガントな革のスーツにスレンダーな身を包み、本人いわく「小さなサンタクロースのような」いでたちでベルリンの空港に姿を現したバインホルンさんは、スーツケースに帽子用ケース、それに蓄音機まで機内いっぱいに詰め込んで、世界一周飛行に挑戦する。ヒマラヤ山脈を越え、カルカッタ、バンコクを経てオーストラリアのバースへ。そしてブエノスアイレスなど中南米を回って翌年の7月26日、ベルリンに無事帰ってきた。25歳の快挙だった。
一躍時の人となったバインホルンさんの冒険は、その後数年間、大西洋横断、アメリカ、インド、アフリカと、とどまることがなかった。自動車のレーサーだったローゼマイヤーさんと知り合い、結婚したのもその頃だ。ローゼマイヤーさんは数年後に不慮の事故で亡くなるが、女性飛行のパイオニアと有名レーサーのロマンスは当時、「夢のカップル誕生」と国中が注目した。
現在バインホルンさんは、ミュンヘン近郊の高齢者施設で余生を過ごしている。車椅子での生活だが、「まだまだ若い女の子のように元気だ」と息子のベルントさん。「午後にたしなむ一服のたばこが、何より楽しみのようです」
「Süddeutsche Zeitung」紙 "Das fliegende Mädchen"
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