会議に演説に国会答弁と激務の日々を過ごす政治家にとって、気の置けない同僚との会話はちょっとした息抜きの時間に違いない。さもなくばメディアに向けて爆発しそうな暴言を防ぐガス抜きか。だがそこに罠が仕掛けられていたのであった…。
「プレスコット副首相(当時)はいない方がマシ」、有力政治家のそんな暴言がしっかり録音されてしまったのだ。それも、ものまね芸人がゴードン・ブラウン財務相の声音をまねてかけた電話で、というから始末が悪い。
この罠に見事に引っ掛かったのが、ブレア内閣の古参メンバーであるマーガレット・ベケット外相。長きにわたって政権を支えてきた同僚の喋り方くらいもちろん知り尽くしている…はずだったが、電話線の向こう側の人物がまったくの別人だったなんて、まさか思いもよらなかったようだ。
「偽ブラウン財務相」の正体はものまねタレントのロリー・ブレムナー。2年前に録音されたテープをこの度「サンデー・タイムズ」紙が入手、紙面を飾ったというわけである。
時は2005年の総選挙直前、ブレムナーは当時の環境・食料・農業大臣を務めていたベケットの番号をダイヤルした。彼の第一声は「やあマーガレット!
ゴードンだよ」。「あらゴードン、どうしたの?」という返答から始まった会話は、選挙後の内閣改造の話題にまで及んだ。
爆弾発言が次々に飛び出したのはその後だ。バイヤー元閣僚の再入閣について「彼はちょっと危ないわよ」、労働党の選挙運動担当だったミルバーンを「仕事をうまくやっているとは言えないわね」と斬りまくる。しかしブレア首相の腹心、プレスコット副首相への一撃はさらに強烈。「彼がいなければ、物事がもっと効率的になると思うけど」ときたものである。
この一件で怒り心頭のベケット、「そんな会話に覚えはないし、仮に事実だとしても、ひどいプライバシーの侵害です」といった内容のコメントを出したが、今ごろは今後のための防御策を張り巡らせていることだろう。ひょっとしたら閣僚ごとに合言葉を決めていたりして。例えば「ハロー、トニーだよ」「あらトニー、ところで、おとといの私のスーツの色を覚えてる?」「…(ガチャン)」なんて風に。
「The Sunday Times」紙
Beckett duped by "Chancellor" Rory Bremner
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