フランス大統領選まで残すところ数カ月。新聞、テレビなどのメディアが連日、次期大統領候補として有力視されるサルコジ、ロワイヤル両氏を取り上げる中、1月22日のニュースはこの2人ではなく、温厚な顔にサンタクロースのような白ひげをたくわえた老人の話題で一色となった。
話題の主は、慈善団体「エマウス(Emmaus)」の創設者で、路上生活者の救世主「ピエール神父(本名アンリ・グルエス)」。こじらせた風邪の治療のためにパリ市の病院に入院していたのだが、容態が悪化し、94歳で亡くなったのだ。
ピエール神父は1912年、フランス南東部リヨンで生まれ、30年にカトリック教会カプチン会の修道院に入った。第二次大戦中は、迫害されたユダヤ人の国外逃亡を手助けし、終戦後に生活弱者の保護と支援協力の為に「エマウス」を設立した。
主な活動は、不用品の回収と再販売。衣類や雑貨から家電製品に至るまで、一般家庭で不要となった品物を分別・修理してリサイクルするのである。また、ホームレスや貧困にあえぐ人には仕事を提供したりと、まさに弱者の味方であった。その後、エマウスの運動は世界各地に広まり、団体名も「エマウス・アンテルナシオナル(Emmaus
International)」と代わり、41カ国、299の支部団体と122の関連団体で運営されている。
エマウスがこれほどの規模にまでに成長したきっかけは1954年冬のこと。パリでアパートから追い出された女性が路上で凍死したニュースに、ピエール神父が激怒!
ラジオを通じて路上生活者のための救援を全国の視聴者へ呼びかけたことで、エマウスの存在が知れ渡るようになった。神父は日曜に発行される「ジュルナル・ドュ・ディマンシュ」紙が定期的に行う著名人ランキングでも常に首位を争う人気者だった。
亡くなった翌日23日の新聞や雑誌はこぞって偉大な英雄を偲んだ。あるホームレスは、「寒さで凍え死ぬつらさよりも、彼を失ったことの方がつらい」と語っている。
ピエール神父のご冥福をお祈りします。
「Libration」紙ほか
Saint domicile fixe
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