Bright Young Things
ブライト・ヤング・シングス(2003 / 英)
英国の作家イーヴリン・ウォーの小説を基にした群像劇。1940年代初頭のロンドンで享楽の日々を送る若者たちの姿と、その行く末をコミカルなタッチで描く。
© Richard Bryant
監督 | Stephen Fry |
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出演 | Stephen Campbell Moore, Emily Mortimer, Dan Aykroydほか |
ロケ地 | Somerset House |
アクセス | 地下鉄Charing Cross / Covent Garden駅から徒歩 |
- 新年おめでとうございます! しかし昨年は世界中でいろんなことがありましたね。
- うん、パッと思い付くだけでも、日本を始め世界各地で発生した大地震や天災の数々、中東・アフリカにおける反体制デモ、次々と届く独裁者の訃報など、様々な意味で「変動」を感じさせられる一年だったよな。これから世界がどう変わっていくのか、思いをめぐらさずにはいられん。
- なんだかいつになくシリアスな上に、出だしからシメみたいになっていますが、2012年最初の捜査、はりきって参りましょう! ということで今週は、タイトルだけ見ると新年への希望がわいてきそうな一本です。その名も「Bright Young Things」!
- 英国の上流社会を風刺した作品群で知られるイーヴリン・ウォーの1930年発表の小説「Vile Bodies」を、俳優スティーブン・フライが監督初挑戦で映画化したドラマですね。1920〜40年代に英国で「BrightYoung People」と呼ばれていた、享楽的なパーティー・ピープルを題材にしています。
- 日本で言えば「新人類」みたいな世代だったんだろうね。絶えず快楽を求めてパーティーに明け暮れたり、拝金主義的な要素が見られたりと、やっていることは「バブル世代」に近いような気がするが。
- 「 Bright Young People」というのは、本作でジェームズ・マカヴォイが扮しているような、当時パーティー・セレブのゴシップを追い掛けていたタブロイド紙の記者がつけた呼び名なんですね。連日ドラッグやアルコールとともにデカダンな仮装パーティーなどのナイトライフに耽っていた、主に上流階級の奔放な若者たちのことです。
- しかし本作の主人公である作家のアダムは、恋人のニナと結婚したいと思いながらも、資金が足りません。大手タブロイド紙の依頼で書き上げた「Bright YoungThings」と題する処女作も、旅先のフランスから帰郷する際にドーバー海峡で検閲に引っかかり没収されてしまったために、見込んでいた収入がおじゃんになってしまいます。あ、こちらの蒸気船がドーバーの港へと近付くシーンはドーセット州の「Swanage Bay」で撮影されていますね。
- 意気消沈するアダムだったが、その直後、生活の拠点にしているホテルのラウンジでちょっとした賭けに勝ち、たちまち1000ポンドを手に入れちゃうんだな。
- ところがここで欲を出してしまって、その場に居合わせた少佐に勧められるまま、競馬の掛け金として彼に1000ポンドを預けてしまいます。すぐに後悔してお金を取り返そうとするも後の祭り、その少佐はまるで忍者のごとく姿を消してしまうのでした。
- この、意図的なのかとぼけているのかよく分からない少佐と「あぶく銭」が、最後まで物語に絡んでくるんだよな。
- ですが、ブルーとシルバーの光に照らされたムーンライト・パーティーは「ThePark Lane Hotel」のエントランス・ホール、またマイケル・シーン扮するマイルズの母、メイトランド夫人主宰の盛大なパーティーは、会場の外観に「Somerset House」、内観にはルートンにあるラグジュアリーなホテル「Luton Hoo」が使われています。
- この映画のマイケル・シーンがまたトランスヴェスタイト風ですごいですね。
- いやーほんと、しばらく誰だか分かんなかったよ。さすが、やるねえ。
主演のスティーブン・C・ムーアは本作で映画デビュー。ダン・エイクロイド、ピーター・オトゥール(最高!)など脇役が豪華で素晴らしい。2つの世界大戦の狭間という時代背景もあり、刹那的な享楽の日々の末に行き着くところはやはり……というありがちな展開にはやや退屈するが、一寸先は何が起こるか分からないという時代の気分が描かれている点で、変動を多分に感じる今にもどこかリンクする部分があるように思えたぞ。2012年が良い年になりますよう!
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