Funny Bones
ファニーボーン 骨まで笑って(1995 /英・米)
大物芸人ジョージ・フォークスの息子トミーは、ラスベガスで芸人を目指していたが、父の存在がプレッシャーとなり、晴れ舞台で大失態を演じてしまい……。
監督 | Peter Chelsom |
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出演 | Jerry Lewis, Oliver Platt, Lee Evans ほか |
ロケ地 | Pleasure Beach Blackpool |
アクセス | London・Euston駅からBlackpool Pleasure Beach駅まで列車で3時間 |
- 今週は、一見コメディー映画のようであって、実は結構泣かせるドラマですね。
- ちょいとちょいと。久しぶりに手放しでおすすめしたい映画だよ、コレは。私が推薦する作品はなぜか一般的にはあまり人気がなかったり、日本未公開だったりするのが、我ながらちょっと気になるがな。
- いやいや、本作は僕もとても良かったと思います。まずメンツがすごい、芸達者ぞろいです。 欧米のコメディーが好きじゃないとあまりピンとこないかもしれませんが、まず大物コメディアン、ジョージ・フォークス役に、米国が誇る大御所ジェリー・ルイス。オリバー・プラット扮するジョージの息子トミーの異父兄弟であることが後に判明する、若き天才コメディアン、ジャックの役には、現在、脂が乗っている英コメディアン、リー・エヴァンス。さらにジャックのお父さんと叔父さんに、それぞれフレディ・デイビス、ジョージ・カールというベテランの芸人が扮し、円熟味のあるキャラとともに珠玉の職人技を披露しています。
- そもそも本作は、トミーが2世の壁を乗り越えようとするだけの話かと思ってましたが、実のところ主役はエヴァンス演じるジャックじゃないですか? エヴァンス本人のネタかと見紛う劇中での舞台を始め、彼の出演シーンには釘付けでした。
- エヴァンスを知らない人でもきっと「この人、誰!?」と注目しちゃうよね。
- ジャックは劣悪な環境下にいる天才、一方トミーはスター・コメディアンの父を持ち、恵まれた環境にいながらも、いやそれだからこそ凡才なんですね。それで、晴れ舞台で客を凍り付かせるという大失態を演じてしまう。しかしそこまで落ちたからこそ、認めたくない事実と正面から向き合う覚悟で、幸せな子供時代の思い出が残る英国のブラックプールまで、起死回生を賭けて「ネタを買いに」出掛けて行くんですね。
- そのあたりもいかにも金持ちのボンボンっぽい発想なんだよね(笑)。しかしそこで実は父も他人のネタを盗んでいたということや、ジャックという天才の弟がいたことを知るわけだが。それにしても久しぶりに、映画を観ていて心底、舞台となった土地に行ってみたいと思ったよ。妖しげなサーカス、コメディー、マジック・ショーが行われている夏の海辺。寓話的な幸福感がありながらも、ブライトンみたいにお洒落じゃなくて、どこか退廃的な物悲しさが漂う北の海、ブラックプール。いやぁ、いいねえ。
- ジャックが精神錯乱を起こしててっぺんにろう城する塔は、パリのエッフェル塔に着想を得て1894年に建造されたブラックプールのランドマーク、「The Blackpool Tower」です。彼らが舞台に立つシーンは、「The Blackpool Tower Circus」で撮影されていますね。また、息子トミーを追ってブラックプールに十数年ぶりの帰還を果たしたジョージが大衆に拍手で迎えられる船上の場面は、英国ナンバー・ワン、世界でもトップ20に入る来客数を誇る遊園地「Pleasure Beach Blackpool」で撮られました。
- 実はブラックプール以外でも数多く撮影されているんですね。例えば、悪の元締めドリーの家と、ジョージのブラックプールの家は、ハートフォードシャー州にある歴史的建造物「Knebworth House」のライブラリー、また、ジャックが演じる「Valve Radio」のパフォーマンスをトミーが初めて観るシーンは、ロンドンの「Café de Paris」といった具合です。
監督と共同脚本は「Shall We Dance?」のピーター・チェルソム。登場人物が全員非常に味わい深く、コミカルでとぼけた演出にペーソスが見え隠れするのが個人的にツボだ。才能と人気がすべてのシビアな世界の現実が描かれるとともに、サスペンスの要素も加わっていて最後まで目が離せないぞ。クライマックスのラストシーンは圧巻のパフォーマンス。特に高所恐怖症の人はリアルに手に汗握っちゃうと思うよ。
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