The Good Shepherd
グッド・シェパード(2006 / 米)
1961年、キューバのカストロ政権転覆を狙ったピッグス湾侵攻作戦が米中央情報局(CIA)内部の情報漏えいにより失敗、上層部の諜報員エドワードに疑惑が及ぶ。その矢先、エドワードのもとに謎の録音テープと写真が届けられ……。
監督 | Robert De Niro |
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出演 | Matt Damon, Angelina Jolie, Robert De Niroほか |
ロケ地 | The Dickens Library |
アクセス | 地下鉄Euston / Russell Square駅から徒歩 |
- 今週はあのロバート・デ・ニーロが監督を務めた、本格スパイ映画を捜査します。米ソ冷戦時代、キューバ革命前後の世界を舞台に、一人の米国人諜報員の半生を浮き彫りにした渾身の大作ですね。
- スパイ映画は数あれど、史実に基づきリアリティーを追求したという点では、他に類を見ない作品じゃないかね。元CIA諜報員が指導員として製作に参加している上、小説や映画といった文芸作品にはノーコメントの姿勢であるCIAが、この映画に関してのみ、事実考証を行ったんだったな。
- はい、その記事はCIAのホームページ (www.cia.gov) にも掲載されています。
- マット・デイモン扮する主人公のエドワード・ウィルソンが、元CIA諜報員のジェームズ・ジーザス・アングルトンをモデルにしているように、登場人物の多くが実在した人物に基づいて描かれているというのもポイントですね。それにしても2時間47分という、近年稀にみる超長編です。
- 私はさほど長いと感じなかったが、硬派なスパイ物語にさほど興味を持てない女性なんかには、ちょっと長過ぎるのかね。
- そういう人はそもそもこの作品を手に取らないのでは……と思いがちですが、そうも言えないんですよね。なぜなら本作は激動の時代に暗躍したスパイたちの物語であると同時に、エドワードという一人の男の人間ドラマでもあるからです。初恋の人ローラ、妻マーガレット、息子エドワードJr、そしてイェール大学時代からの同輩らとの関係も大きな見どころですよね。加えて父の「事件」というトラウマもありますし。
- 「スパイ映画」と一括りにしてはもったいない、重層的なストーリーだよな。ところでエドワードが入会するイェール大の「スカル & ボーンズ」って、実在すると聞いたが。
- はい、これぞ米政界を牛耳る秘密結社であります。ジョージ・W・ブッシュと、その父ジョージ・H・W・ブッシュ、さらに祖父のプレスコット・ブッシュまでが会員だったことでも知られていますね。映画の中でエドワードが入会時に、誰にも話したことがない秘密をメンバーと共有するシーンがありますが、これも実際に行われている儀式らしいですよ。
- さて、最後になりましたが、英国内のロケ地をここで報告しておきます。
- エドワードがロンドンに赴任する時代があるもんな。
- はい、でもその前にまずイェール大でエドワードの指導教官であり、彼が退官に追い込んだフレデリックス教授のクラスルームが、ラッセル・スクエアとユーストンの間、Tavistock Place 5-7番地にあります「Mary Ward House」内の「The DickensLibrary」で撮影されていますね。
- ロンドンに舞台を移した後、フレデリックス教授が英国の諜報員として再登場し、エドワードとパブで話すシーンがありますが、こちらはケンジントンにあるジョージアン・パブ「Windsor Castle Pub」で撮られています。同名のパブがあちこちにありますから、お間違えのないように。また、クーパー公爵が車内で諜報員から不正を問われている様子を、エドワードとフレデリックス教授が別の車から見ているシーンがありますが、こちらはウェストミンスターの「KingCharles Street」ですね。教授と最後に別れるシーンは、ホルボーン界隈、「MiddleTemple Lane」で撮影されています。
「友達に嘘をつくな。信用を失い誰もいなくなる」という父の言葉を心に留めながら「この世界では誰も信用してはならない」という周囲の助言も無視できるはずがなく、嘘の代わりに秘密を多分に抱える人となったエドワード。その苦悩は計り知れないが、それでも彼は国家の「善き羊飼い」として、運が尽きるまで任務を続けるんだろう。それにしても家庭の幸せと、国家、言い換えればエリート層が考える幸せは、近いようでやっぱり遠い気がするな……。
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