Dirty Pretty Things
堕天使のパスポート(2002 / 英)
卑劣な犯罪がはびこるロンドンで、夢の実現のためにリスクを背負ってパスポートを手に入れようとする、不法移民の男女の姿を描いた社会派サスペンス・ドラマ。
監督 | Stephen Frears |
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出演 | Chiwetel Ejiofor, Audrey Tautou, Sophie Okonedo ほか |
ロケ地 | Whitehall Court 4 |
アクセス | 地下鉄Embankment駅から徒歩 |
- 英国での長期滞在を望む外国人にとって、ビザの問題は本当に頭が痛いですよね。
- 一昔前は簡単だったのに、年々、条件が厳しくなってるからなあ。ビザで泣いてる人を何人知っていることか。
- 現在の英国の不法滞在者数は、推定100万人らしいですよ。そのうち3分の2は、留学生として入国した人たちなんだとか。そんなこともあって、学生ビザの規制もどんどん厳しくなっているんでしょうね。
- 日本人は比較的真面目に規則に従っている方だと思うが、結構大胆に居座っている他国の人の話もちらほら耳にするね。しかも英国には永住権取得の条件の一つに「合法、非合法を問わず継続して14年以上、英国に滞在した人」なんてのがあるし。嘘も14年突き通せば本当になるってか?
- 14年もくぐり抜けられたお前はラッキーだから居てもいいぞ、というような……。しかしビザ取得にしろ入国審査にしろ、運一つにかかっている印象は拭えませんよね。僕はこっちに住むようになって「グッドラック」のニュアンスが心底分かるようになった気がしています。
- というわけで、今週はロンドンに暮らす不法移民を主役に据えたヒューマン・サスペンス・ドラマです。「マイ・ビューティフル・ランドレット」「危険な関係」など数々の名作を世に送り出してきたスティーブン・フリアーズ監督作で、2003年にアカデミー脚本賞にノミネートされているほか「ベスト・インディペンデント・ブリティッシュ・フィルム」に輝いている一本ですね。「アメリ」のオドレイ・トトゥがトルコ人移民シェナイに扮し、演劇界の実力派キウェテル・イジョフォーが、ナイジェリア移民の元医師オクウェを演じています。
- ロンドンに住むことがなかったら、いま一つよく分からなかったであろうシビアな事情が、リアルに感じられる作品だな。
- 母国で医師だったオクウェは訳あって国外逃亡中。日中はミニキャブの運転手、夜はホテルに勤務しています。彼が働くタクシー会社には、ロンドン・ブリッジ駅近く、Southwark Street 28番地の「London Bridge Cars」が使われています。また夜勤先の「Baltic Hotel」は、外観にエンバンクメント駅近くの「Whitehall Court 4」、ロビーにはロンドン南西部の「Wandsworth Town Hall」が使われていますね。
- その同じホテルでメイドとして不法就労しているシェナイは、オクウェのフラットメイトでもありまして、自由を求め米国に渡るという夢を密かに胸に抱きながら、パスポートを得るチャンスを伺いつつ、底辺の暮らしにかろうじて耐えています。2人が住むフラットは、ロンドン東部のKingsland High Street 98番地で、Dalston界隈の活気溢れるRidly Road Market周辺も舞台になっています。フラットや勤務先に突然、移民局の局員が押し入ってくる場面にはハラハラしました。不法滞在者の取り締まりに関する噂をいろいろ耳にしますが、実際にこんな感じなんですかね……。
- かもな……。しかしそんなある日、オクウェが勤務先のホテルの客室トイレで、なななんと人間の臓器を発見してしまったことから、そのホテルで行われている恐るべき犯罪を知ってしまうんだな。
- 不法滞在という弱みにつけこまれ、また誘惑に負けて屈辱を味わい、犯罪に加担させられそうになる2人ですが、最後に大胆な行動に出て驚くべき逆転劇を見せます。スリリングな展開で引き込まれましたね。
シリアスな社会問題をテーマにし、リアルな社会構造を浮き彫りにしながらも、2人の移民の純愛や、サスペンス・タッチのストーリー展開が効いていて、なかなか飽きさせない見応えのあるドラマに仕上がってるぞ。脇役もみんな個性的で、いい味出してるしな。最後はアッパレな半面、それぞれの未来へ向かう2人の心痛が伝わってくるようで、なんとも切ないね。
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