The Wicker Man(1973 / 英)
ウィッカーマン
スコットランドはハイランド地方の警察に勤めるハウイー巡査部長は、行方不明になった少女の捜索依頼を受け、ヘブリディーズ諸島の孤島へ向かう。やがて彼は島の異様な風習に気付き……。
監督 | Robin Hardy |
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出演 | Edward Woodward, Christopher Lee, Diane Cilentoほか |
ロケ地 | Dumfries and Galloway |
アクセス | ロンドンから列車でEdinburghまで行き乗り換え、 Lockerbieで下車 |
- 今週は、個人的にとても不気味で怖かった、英国発のスリラーです。
- 70年代のカルト的な作品だが、今も映画業界で高く評価されている傑作なのだ。
- ウィッカーマンとは古代ガリアで信仰されていたとされるドルイド教の儀式です。神への生け贄のために柳の枝で巨大な人型の檻を作り、中に人や動物を閉じ込めて焼き殺すという恐るべき宗教儀式ですね。スコットランドでは毎年夏に、ウィッカーマンにちなんだ音楽フェスが行われてます。
- 本作の舞台はスコットランドのヘブリディーズ諸島にあるSummerisleという孤島です。スコットランドにはSummer Islesという列島があり、よく混同されるようですが、ここに登場するSummerisleは実在しているわけではありません。撮影の多くはスコットランド南部の州、Dumfries and Gallowayで行われました。非常に風光明媚な土地で、僕も一度は行ってみたい場所ですけれども。
- 本土の警察に勤めるハウイー巡査部長はある日、Summerisleで行方不明になったローワン・モリソンという少女の捜索願いの手紙を受け取ります。さっそく島へ向かったハウイーですが、そこで彼は自身の価値観を覆すような光景を目にします。
- ハウイーは敬虔なクリスチャンだが、この島はキリスト教以前の信仰とされるペイガニズムに支配されているんだな。
- ペイガニズムとは、広義では自然崇拝や多神教の信仰のことを言いますが、かつてはキリスト教を始めとする一神教に対抗する異教、または無神論という意味合いで用いられることが多く、異端者扱いされることが多かったんですね。不信心な快楽主義者とも見られていました。
- そんな島に何の前情報もないまま足を踏み入れたハウイー巡査部長は、住民たちの「乱れた行い」に嫌悪感を抱きます。
- まあ、いきなり野原でフリーセックスな光景を目の当たりにしたら、誰でもビックリするけどな。しかも住民たちときたら、ハウイーが泊まっている宿「Green Man」のパブで牧歌的なフォーク・ソングを歌い、男女の交わりを讃歌しちゃってるんだから。
- ちなみに「Green Man」のパブの内観には、Creetownにある「Ellangowan Hotel」が使われてます。
- そして隣部屋では、宿場の主人の娘が全裸で艶かしいダンスを踊り、巡査部長の心を揺さぶるのでした。うーん部長、よくぞ我慢しましたな。
- はい、ゆえにストーン・サークルの中で全裸の女体が舞い踊るのを見ても、さほど驚かなくなっちゃってます(笑)。
- あの場面は「Castle Kennedy Gardens」の遺跡で撮影されていますね。またサマーアイル卿の豪奢な自宅のインテリアには、このすぐ近くに立つ「Lochinch Castle」の内観が使われています。さらにサマーアイル卿が、ガーデンを散歩しながらハウイー巡査部長に島の信仰について説くシーンは「Logan Botanic Garden」で撮影されました。
- しかし数ある誘惑にも屈せず、捜索を続けるハウイー巡査部長。学校にも足を向け、子供たちに尋問したりと必死です。
- この学校のロケ地となったのは「Anworth Old Kirk」という古い教会跡の敷地内にあるコテージです。ハウイーがローワンの「墓」を発見するのもここですね。
- その先の展開は、観てのお楽しみだね。衝撃のエンディング・シーンはIsle of WhithornにあるBurrowhead Holiday Villageの「Caravan Park」で撮影されているよ。
内容が内容だけに物議を醸し、公開に至るまでに原版から何度も編集が加えられたというのも納得の一本。鑑賞後はあのフォーク・ソングの数々が恐ろしい幻惑音楽に聞こえてくるよ。2006年にニコラス・ケイジが米国を舞台にして本作のリメイクを製作しているが、どちらも未見なら、絶対にこのオリジナルを観ることをお勧めするぞ。
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