Ladies in Lavender(2004/ 英)
ラヴェンダーの咲く庭で
見知らぬ浜辺に漂着した異国の青年と、彼を救出した老姉妹が織り成す、儚くも美しいドラマ。
監督 | Charles Dance |
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出演 | Judi Dench, Maggie Smith, Daniel Brühlほか |
ロケ地 | Penzance, Cornwall |
アクセス | 電車: London・Paddington駅からPenzance駅まで直通(所要時間約5時間半) コーチ: London・Victoria駅より直通(所要時間約9時間) |
Web | www.cornwalls.co.uk/Penzance |
- デカ長、英国南西部のコーンウォール州へは行ったことありますか。
- おう、あるぞ。きれいなところだよなあ。そういえばジローはあのへんに住んでたんじゃなかったっけ。
- そうなんです。50代の英国人女性の家にステイしていたんですが、今回、コーンウォールを舞台にしたこの映画を見て、その頃のことを思い出してしまいまして。
- 英国が誇る二大オスカー女優にして、ともに英国王室よりデイムを叙勲されている、マギー・スミスとジュディ・デンチが老姉妹役で競演した名作だな。
- はい、そして浜辺で倒れていた青年に扮したのは「グッバイ・レーニン!」のダニエル・ブリュールです。彼が映画内で披露するバイオリンの演奏は、実際には米国人バイオリニストのジョシュア・ベルが行っております。そして撮影は、主にコーンウォールのCadgwithという漁村やHelston、Penzanceなどで行われています。
- ジャネット&アーシュラ姉妹が住んでいるコテージもその辺りなのか?
- はい、PenzanceとHelstonの間に位置するRosudgeonという村から約1.6km南下したところに入り江が連なっている場所があるんですが、その中の一つのBessy's Coveの近くに建っています。映画の舞台は1936年の設定ですが、今も当時と変わらないのどかさのようですね。
- 原作は英国の作家であり脚本家でもあるウィリアム・J・ロックが1916年に発表した短編で、姉妹の年齢設定は40代後半です。しかしジュディ・デンチとマギー・スミスが本作に出演した時の年齢は、ともに70歳。原作とはかなり感じが変わっていますね。
- うん、それだけにおとぎ話のような美しさが際立っているんだろうな。
- 40代なら普通に恋に発展しそうですよね。英国人女性なら尚更、驚かないです。
- そう、僕のホストマザーも50代で離婚歴3回、それでもまだまだ恋に貪欲でした。ゆえに若々しくて可愛いんですよ。
- そんで恋に発展しちゃったのか。
- まーそのー、いやー、あはは。
- ……。それにしても本作のジュディ・デンチは、普段演じているような強い女とは違って、恋する乙女そのものだよな。
- アーシュラは未婚で、おそらく70歳にして初恋を体験してしまったんですね。
- ジャネットが呆れながらもそれを優しく見守っているのもいいですよね。青年にちょっかいを出してくる画家の女性、オルガのことを「魔女みたいだわ!」なんて大人げなく言っちゃったりとか、オルガが彼に宛てた手紙を燃やしちゃったりとか。
- 普通に考えたら陰険だけど、この上品な老姉妹がやると可愛いんだな。随所にちりばめられたユーモアもいい。魚の頭がブッ刺さったパイを見て、アーシュラが「ちょっとこれ、哀れじゃない?」と言えば、ジャネットが「全然よ」と言ってグサッとナイフを入れる場面とか、好きだね。
- あれは「Stargazy pie」といって、コーンウォールのMouseholeという村の名物料理です。魚の頭が空を見上げているように見えることからこの名が付いているそうです。
- なにはともあれ、そんな愛らしい老姉妹ですが、さすが熟女、引き際は潔い。美しくもあり、切なくもありますね。
- おおっとジロー、感傷入ってるね。
- ええ、まあ……。久しぶりにホスト・マザーに手紙でも書こうかと思ってます……。
静かな浜辺に降って湧いたように異国の青年が現れ、平穏な毎日を送っていた老姉妹に思いがけない変化をもたらすという物語もさることながら、この老姉妹が無垢な少女のごとき愛らしさを漂わせていて、本当に童話のような美しさだ。アーシュラが抱く儚い恋心はやっぱり切ないがのう。英国の詩人アルフレッド・テニスンの「恋をして恋を失ったほうが、一度も恋をしなかったよりマシだ」という言葉を捧げたいぞ。
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