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Mon, 25 May 2020

英国発ニュース

英原発、中国企業に門戸開放-にじむ「電力不足」への焦燥感

【ロンドン10月30日時事・川村豊】英政府が21日、英南西部ヒンクリーポイントに新たな原子力発電所を建設することで、フランス電力公社(EDF)と合意した。この中で特に業界関係者の注目を集めたのが、EDFの事業パートナーとして中国国有企業2社が計30~40%出資することを英政府が認めた点。中国企業が英原発事業に参画するのは初めてで、背景には迫り来る「電力不足」を前に発電所投資が進まないことへの英政府の焦りがにじむ。

 

 ◇中国企業の過半数出資も

 英国での原発新設は、1995年完成の「サイズウェルB」以来25年ぶり。90年代の電力自由化以降では初となる。EDFは仏原子力大手アレバ製の欧州加圧水型炉(EPR)2基(発電能力計320万キロワット)を建設し、2023年に商業運転を開始、35年間電力を供給する計画だ。

EDFは当初、英エネルギー大手セントリカと共同で事業を進める方針だったが、同社は東京電力福島第1原発事故などを背景とするコスト増加を受け撤退。新たに中国原発大手の中国広核集団(CGN)と中国核工業集団(CNNC)を事業パートナーに選定した。

 こうした枠組みにゴーサインを出したのが、中国を訪問中のオズボーン財務相が17日に発表した声明だった。ここで同財務相は、中国企業の原発事業への参画を容認し、さらに発表文には「将来的に過半数出資する可能性も認める」とわざわざ明記。EDFは東部サイズウェルでも原発2基を建設する計画で、ここでは中国企業が過半数を握る可能性がある。

 原発は電力供給という重要なインフラであり、また国の安全保障にも関わる施設でもある。こうした施設の運営に透明性が疑問視される中国企業が深く関与することには「戦略的に危険」(英紙ガーディアン)との警戒感は強いが、英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)上級研究員のアントニー・フロガット氏は「米国と違い英国は外資系企業のインフラ投資に寛容」と指摘する。少なくとも今回は、「電力網ならともかく発電所レベルでは問題ない」(英エネルギー専門家)と判断したと言える。

 しかし1年前の状況と比較すると、英政府の方針転換ぶりが際立つのも確かだ。

12年秋、日立製作所が最終的に競り落とした新規原発事業会社「ホライズン」の買収劇をめぐっては当初、アレバとCGNの陣営と東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)と中国の国家核電技術公司(SNPTC)などの陣営が有力視されていた。

 ところが英政府は「中国系企業は半数以下の株式しか取得できない」と主張し、アレバとWH陣営をけん制。そればかりか、「日立が買収できるように政府から水面下で働きかけがあった」(関係筋)とされるなど、中国系企業参画への警戒感は明らかだった。

 

 ◇停滞する発電所新設

 何が英政府を転換させたのか。その疑問を解く一つのカギが、電力供給不足への危機感だ。

 英国では、老朽化した原発や欧州連合(EU)の環境規制に適合できない火力発電所の閉鎖を順次進めており、20年代半ばまでに発電能力の約6割を失う見通しとなっている。

 このため政府は民間事業者に発電所新設を促しているが、電力自由化以降は「民間企業として短期的な採算を重視せざるを得ない」(英電力業界関係者)として、長期にわたり巨額の投資を必要とする発電所新設が停滞。政府は「16年には供給余力が4%にまで急低下する可能性がある」と警告する。

 その上、政府が代替基幹電源と二酸化炭素(CO2)排出削減への切り札と位置付ける新規原発プロジェクトは、EDF、日立、さらには仏大手GDFスエズ主導の3プロジェクトいずれも、資金不足から既に大幅に遅れている。

 供給力の6割を失う20年代半ばに「穴」が空く事態を回避するためには、先行するヒンクリーポイントのこれ以上の稼働の遅れは許されない。こうした中、政府も「豊富な資金力を持つ中国企業に頼らざるを得ない面があった」(関係筋)と言える。

 実はこうした焦燥感は、EDFと合意した事業計画の細部にも浮き彫りになっている。

 ヒンクリーポイントでの新設計画が停滞していた背景には、セントリカ撤退に加え、安全コスト増加に伴い将来の収益見通しが立たなくなったことも大きかった。このためEDFは、英政府に長期にわたる支援を要求。最終的に、政府が電力の高値での買い取りを約束し、これがEDFの背中を押す格好となった。

 具体的には、ヒンクリーポイントで発電される電力1000キロワット時あたり実質固定価格92.5ポンド(サイズウェル原発稼働後は89.5ポンド)での買い取りを保証した。洋上風力の買い取り価格約155ポンドと比較すると安いものの、卸売市場での実勢価格の約2倍。しかも35年間の長期にわたる好待遇で、「投資の停滞を打破するための国家的枠組み」(業界関係者)と言える。

 一方、こうした英国の国家挙げての原発投資の呼び込みは、中国企業ばかりか、高い技術力と資金を持つ日本企業にとっても朗報になる。ホライズンを買収した日立は、英国内2カ所で計4~6基の原子炉新設を計画しており、ヒンクリーポイントと同じ20年代前半の稼働を目指す。また仏GDFスエズが主導するプロジェクトでも、東芝がWHを通じた事業買収に強い意欲を示しているとされている。20年後、英国で稼働する原発の大半は日本と中国が主導している、といった事態もあり得そうだ。
 
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