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Tue, 24 May 2022

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

電気自動車がいよいよ増える? - 充電設備増築へ来年から新築住宅·商業施設でスタンド設置が義務化大

最近、通りを歩くと電気自動車(EV)の充電スタンドが目に付くようになりました。道路の端に設置されている白い筒状のスタンドで、上部が緑色に光っています。最初は何だろうと思いましたが、自動車とつなげて充電している人を見て、納得した次第です。

地球温暖化対策が、世界各国にとって喫緊(きっきん)の課題となってきましたね。英国は、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを法制化し、2030年までにガソリン· ディーゼル車の新車販売を禁止する方針です。

温暖化ガスの排出が最大の業界は運輸業界で、全体の27パーセントを占めるそうです(下院調べ)。一般車による排出はこの55パーセントに相当。そこで政府がプッシュしているのがEVの普及促進です。10年ほど前からさまざまな施策を講じ、充電設備支援のために地方自治体に助成金を提供してきました。今年10月には助成金と充電インフラに6億2000万ポンド(約950億円)の投資方針を発表し、11月末には、ボリス· ジョンソン首相がイングランドで新築の住宅やスーパーマーケット、オフィス· ビルなどの商業施設にEV用充電スタンドの設置を義務化することを発表しました。10台以上の駐車スペースがある建物の改修工事にもスタンド設置が求められます。新たに年間14万5000カ所に充電器が設置される見込みです。国内にあるEV用充電器は現在2万5000台。英競争·市場局は30年までに供給を10倍に拡大する必要があると予想しています。

EVと一口に言っても、複数の形態があることをご存じですか。100パーセント電動モーターだけで走るEV、電気および化石燃料の両方を動力とし、充電スタンドにつないで外部から充電できる「プラグイン· ハイブリッド車」(PHEV)、同じくハイブリッドですが車に搭載された電池(バッテリー)が運転中に充電される「ハイブリッド車」(HEV)、水素と酸素の化学反応による燃料電池で動く「燃料電池車」(FCV)など。EVの販売台数は年々増加しており、2018年には年間販売台数の2.5パーセントでしたが、20年には約10パーセントに達しています。

EVを利用する際にネックの一つとなっていたのが充電スタンドの不足でした。今回の増設方針で状況が緩和されるようですが、最大野党労働党は充電設備が「ロンドンや周辺の南東部に集中している」ことを指摘し、全ての地域に均等に設置されるよう求めています。高価格になりがちなのも難点でしたが、政府はEV購入に助成金を提供しています。対象は乗用車、オートバイ、タクシー、ワゴン車、トラック、原動機付自転車など。例えば乗用車の場合、価格の35パーセント、最大2500ポンド(約38万円)までを支援するそうです。

11月中旬まで、北部グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回条約国会議(COP26)が開催されていましたね。参加国による合意の一つは、ガソリン・ディーゼル車からEVを含むゼロ· エミッションの車両への移行を加速することでした。各国政府、都市政府、企業などが「主要市場での」温室ガス排出車両の新規販売を「2035年までに」、全世界では「2040年までに」終了する、と誓いました。自動車メーカーのフォード、ジェネラル· モーターズ、ジャガー·ランドローバーなども署名。ただ、世界最大の自動車市場を持つ米国は国としては名前を連ねず、メーカーではフォルクスワーゲンやトヨタなどが署名しませんでした。また、第二位の自動車市場がある中国のほか、欧州連合(EU)最大の自動車市場であるドイツも署名せずでした。一方、COP26での合意よりも5年早い2030年に、ガソリン· ディーゼル車の新車販売を禁止する予定の英国。本当に実現するのか? と現時点では半信半疑の筆者ですが、EV用充電スタンドがガソリン· スタンド同様に見慣れたものになる日は、思ったよりも近いかもしれませんね。

キーワード

Electric Vehicle(電気自動車)

電気をエネルギー源として、電動機(モーター)で走行する車両。充電後の走行距離はEVの種類や運転の仕方、路上状況などによって変わるが、電動モーターだけで走るEV(狭義の「電気自動車」)の場合、1回の充電で160~400キロの走行可能(下院調べ)。EV普及が最も進んでいるのはノルウェーで、2025年までにガソリン· ディーゼル車の新車販売を禁止する予定。

 
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