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Sun, 22 September 2019

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

続くポンド安傾向、ブレグジットの先行き不安か - 夏休みの海外旅行に影響大

このところ、ポンド安の傾向が続いています。日本から英国にやってきた人は円に使い出があるのを実感しているところでしょうか。逆に、英国から日本に行った人は、ポンド安を残念に感じているかもしれません。

筆者は7月上旬に日本に滞在しましたが、この時は1ポンド145~147円ほど。ところが8月12日には127円を割り、この急激で大きな下落には驚くばかりです。

ポンド安は他の主要通貨と比較しても同様の状況で、7月末時点で1ポンド=1.088ユーロ、対ドルでは1ポンド=1.21ドルを記録しました。2009年には1ポンド=1.02ユーロ、1985年には1ポンド=1.05ドルまで下がったことがありますので、今回はそこまではいきませんでしたが、今後も予断を許しません。

最近のポンド安の原因は、皆さんも想像するように、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)の先行きが不透明になっていることです。7月24日、離脱強硬派のボリス・ジョンソン氏が首相に就任したことで、離脱後の関係についての取り決めをせずに離脱する「合意なき(ノーディール)離脱」の可能性が高まっています。首相は離脱予定日の10月31日までの離脱を死守すると宣言していますよね。そして、メイ前政権とEU側が合意した離脱協定案ではなく、新たな離脱案の交渉を求めています。ところがEU側はそうした交渉には応じないと繰り返しており、現在は、両者が正面衝突して合意なき離脱に進む説が有力になっているのです。

ところで、通貨の上下はどうやって決まるのでしょう? 一言で言うと「通貨の需給のバランス」によります。需要を決める要因にはその国の経済力、貯蓄傾向、物価、財政状況、そして憶測(これから起きそうなことは何か)などがあります(BBC ニュース、8月2日付)。

ポンド安の影響を最もひしひしと感じるのは、外貨を使う海外旅行の場合でしょう。でも、輸入品の値段が上がることで物価が上昇し、ポンド建ての給与や貯蓄が目減りすることがありますので、広い層が何らかの影響を受けることになります。イングランド中央銀行の予想(2018年11月)によると、ポンドが5%下落すると、長期的には消費者価格が0.9%上昇するそうです。特に大きな価格上昇が生じるのはパッケージ旅行(2.2%)、衣類(1.4%)、食品(1.3%)など。光熱費や、輸入品が多いコンピューターやテレビ、おもちゃなどの価格も上がりそうですね。

いったい、ポンドはどこまで下がるのでしょう。あるいはいつ下落が止まるのでしょうか。その答えは誰にも確実には分かりません。以下はあくまで予測となりますが、ドイツ銀行は合意なき離脱の可能性を45%、BNP パリバ銀行は40%と見ており、最悪では1ポンドが1ユーロ、1ドルと同等になる可能性が指摘されています。今、議会は夏休みですが、9月に再開されます。「フィナンシャル・タイムズ」紙(8月2日付)によると、その時に10月31日の離脱予定日までに合意なき離脱が避けられるという報道が出た場合、ポンドが上昇することもあります。

8月1日、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁が今年と来年の経済成長率はともに1.3%という予測を発表しました。それぞれ前回5月の予想(今年は1.5%、来年は1.6%)よりも低い数字です。英国がEU側と離脱協定案を無事締結し、一定の移行期間を経ての離脱になることを前提にした予測です。もし合意なき離脱となれば、ポンドが急激に売られ、インフレ率が上昇し、GDPの成長率がより緩慢なものになるそうで、カーニー総裁は「できるだけのことはやるが、できることに限界もある」と述べました。

離脱の道が避けられないとしても、合意なき離脱は避けてほしいと、多くの人が願っているところです。(8月12日脱稿)

キーワード

Pound sterling(スターリング・ポンド)

英国の通貨。通貨単位はポンド。国際通貨コードGBP。英国と、マン島、ガーンジー島などの海外領土でも採用。「スターリング」の由来には諸説ある。中世初期7王国時代に銀貨をスターリングと呼び、重量1ポンドの銀から硬貨を作ったことにちなむ説、古代英語「steorra」(星)に「ing」を付けて「小さな星」の意味を持たせ、これが銀貨を指していたという説もある。
 
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