英国ニュースダイジェストが創刊35周年を迎えたことを知り、うれしい限りです。本コラムの第1号にも書きましたが、筆者は(日本で過ごした1990年代を除き)ほぼ当初からダイジェストを読んでおり、白黒版から現在のフル・カラー版への発展を見てきました。
さて、読者の職場で、英国と日本の文化はうまく共存していますでしょうか。今回は日英の企業文化を融合した形で組織に取り入れることについて考えたいと思います。
私の経験では、英国で従業員の士気を高め、生産性の高い環境を作り上げることに成功する日系企業は、日本と英国のそれぞれの良いところを融合する職場を持つ企業です。「ハイブリッド型」企業文化と呼んでよいでしょう。
では、その良いところは何でしょうか。日本サイドの良いところで言えば、まずは、「高いサービス精神」と「品質への拘り」が思い浮かびますね。この二つを英国スタッフに徹底的に教え込んだらいいと思います。日本で受けられるサービスの具体的な例を挙げるなどして、教育を行ってもいいです。
次は、英国の良いところ。それは「融通が利く」ということでしょうか。つまり、フレキシブルに対応する姿勢、リスクを伴っても新しいことをやってみる意識、そして、ワーク・ライフ・バランスを重んじる働き方です。
双方の良いところはもちろんほかにもたくさんありますが、取りあえずこの5点をバランス良く融合させると、なかなか生産性の高い組織になるのではないかと思います。
とはいえ、ハイブリッド型の職場を作るにはいくつかの課題を乗り越える必要があります。たとえば、英国を拠点にした日系企業の大半は、日本に親会社を持ちながら英国の法人です。英国人スタッフの親会社に対する意識は低いかもしれません。親会社を意識しても、自分たちは「英国の会社だから英国流で運用する」という強い意志を持っている可能性が高いと思われます。
このような場合、完全な「Japanese company」にとらわれない日本側の意識がポイントとなります。私が勧めるのは、多くの在英日系企業の場合、会社全体の方向性は日本で決められるので、その事実を認めた上で「Japanese-influenced」(親会社の影響を受けている)企業風土を作り上げるのに注力すること。Influencedという表現を使うことで、互いの文化の押し付けを避ける柔らかいイメージになり、日本の企業文化を少しずつ取り入れることができます。社員全員が、自分は「Japanese-influenced」の企業で働いているという意識を持つことが、ハイブリッド型企業を目指すには現実的です。
また、ハイブリッド型日英企業を作るために、取り入れるべき要素の慎重な選別も必要です。意思決定スタイルや上下関係も無視することはできません。有給休暇や勤務時間に対する考え方や期待の違いも避けられません。簡単とはいえませんが、ハイブリッド型の職場を作る意思が日本人と英国人の両方にあれば、不可能ではありません。優秀な英国人に働きたいと思わせる環境にするためには、ハイブリッド型は欠かせないと思います。
日英カップルの場合においても、ハイブリッド型が理想的でしょう。私も一応それを引き続き目指しています……。
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