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Tue, 03 December 2024

本当に使える会計

経営において会計は身を守る防具だけでなく、勝ち抜くための武器にもなります。英国日系企業の経営者が知っておきたい会計トピックを、会計のプロが分かりやすく解説。

第178回: 決算書内におけるナラティブ・レポーティング

決算書には財務諸表と注記の他に取締役報告書や会社の規模に応じた戦略レポートの開示が含まれます。これらの非財務情報はナラティブ・レポーティングと呼ばれ、ESG(環境、社会、ガバナンス)への関心が高まるなか、その開示内容や範囲が拡大しています。今回は企業規模別に整理してみます。

弊社は今年より中規模になりそうです。決算書に含める開示項目が大きく増大すると聞きましたが。

マイクロ企業(売上63万2000ポンド以下、資産が31万6000ポンド以下、従業員数が10名以下という3条件のうち、2条件を満たす企業)を除く全ての英国企業は、取締役報告書を含める必要があります。規模ごとに開示情報範囲は大きく異なりますが、主な例を挙げると、決算期間中在任した取締役一覧や取締役の責任に関する記述です。下記では中規模以上の企業の例を挙げます。

中規模企業(売上1020万ポンド以上、資産510万ポンド以上、従業員50名以上の3条件のうち2条件を満たす企業)

  • 研究開発の方針
  • 財務リスク管理の目的と方針
  • 将来の事業展開

大規模企業(売上3600万ポンド以上、資産1800万ポンド以上、従業員250名以上の3条件のうち2条件を満たす企業)

  • サプライヤー、顧客、その他との関係
  • SECR(エネルギー消費量と二酸化炭素排出量に関するレポート)。ただし免除条件あり

また、中規模以上の企業は戦略レポートが求められ、以下の内容を含める必要があります

  • ビジネス・レビュー
  • KPI(主要業績評価指標)と財務分析
  • 主要リスクと不確実性
大規模企業はこれにさらにSection 172に関する記述、非財務的KPIとその分析を含めます

上場企業や超大企業(売上5億ポンド以上、従業員500名以上)はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による開示も必要です。ただし、中規模や大規模の帯域に入った場合、即座に当該規模の開示要件が求められるわけではなく、2期連続で当該規模が確定してから適用されます。

SECRとSection 172についてもう少し教えてください。

SECR開示内容は、エネルギー消費量や二酸化炭素排出量の開示に加え、エネルギー効率化への取り組みも説明する必要があります。これにはデータ収集、測定・管理システムの構築が必要で、以下の4項目が主な内容です。

①エネルギー消費量、②温室効果ガスの排出量、③方法論の説明、④エネルギー効率化へのアクション

SECRについての詳細は、バックナンバー(第166回)をご覧ください。次にSection 172に関する記述ですが、英国会社法Companies Act 2006 Section 172では、企業のステークホルダーの利益に対する取締役の義務が規定されています。対象となる大企業は以下の6項目について説明する必要があります。

①会社の意思決定の長期的な結果、②従業員の利益、③サプライヤー、顧客、ステークホルダーとの関係構築,④事業活動が地域社会および環境に与える影響、⑤事業規範に対する評判の維持、⑥会社メンバー間の公平な行動

このように多岐にわたる具体的な説明と開示が求められ、対応には早い段階での計画と準備が必要です。

*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。

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高西祐介 高西祐介
監査・会計パートナー
英国大手会計事務所にて多くの英系大企業監査を担当。日系企業をサポートしたいという強い思いからGBAへ。監査、ファイナンスデューデリ、組織再編アドバイスを専門とする。

財務
 

執筆者

  • 会計パートナー陣スティーブン
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