第177回: 財務報告基準FRS102の改訂
財務報告審議会(FRC)は2024年3月、財務報告基準FRS102の改訂を公表しました。これはFRS105を含むほかの報告基準にも影響を及ぼします。この改訂には以下が含まれています。
- FRS102とFRS105の両方における収益認識の新しいモデル
- FRS102におけるリース会計の新しいモデル
- そのほかの改善と明確化
収益認識に関する改訂は、どのようなものですか。
顧客との全ての契約について、収益を認識するための五つのステップのモデルを導入し、「履行義務」ではなく「約束」という言葉を用いています。
五つのステップとは何ですか。
五つのステップとは、次の通りです。
- 1. 顧客との契約の識別
- 2. 契約における約束の識別
- 3. 取引価格の算定
- 4. 取引価格を契約上の約束に配分
- 5. 企業が約束を充足した時点で(または充足するにつれて)収益を認識
収益認識で比較情報を修正再表示する必要はありますか。
比較情報については、修正再表示するかしないかの選択肢があります。
リース会計では、引き続きファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別しますか。
今回の改訂により区別はなくなり、ほとんどの重要なリースは貸借対照表で認識されることになります。短期リースおよび少額資産のリースについては、適用除外があります。比較情報の修正再表示は必要ありません。
ほかにどのような改訂事項が導入されますか。
サプライヤー・ファイナンス契約にかかわる改定と有形資産と無形資産の両方の要素を持つ資産の取扱いに関するガイダンスがあります。
この改訂は、FRS102の第1A項を適用している中小企業にも影響を与えますか。
この改訂により、小規模企業に対して以下のような開示が追加される予定です。
- 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況に関する重要な不確実性
- 重要なリース取引
- 引当金および偶発債務
- 顧客との契約における履行義務
- 期中に宣言し支払われたか、または支払われるべき配当金
- 当期の税金および繰延税金
- FRSの初めての適用が財政状態や業績に与えた影響に関する経過的な開示
この改訂はいつから適用されますか。
この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
改定は、2026年1月1日以降に始まる会計期間から適用されます。ただし、サプライヤー・ファイナンス契約については、25年1月1日以降に始まる会計期間から適用されます。早期の適用は、全ての改訂を同時に適用することを条件に認められます。
イアン・ロウ
監査・会計 パートナー
1985年の入所以来、さまざまな業種・規模のビジネスで、豊富な経験を積む。意思決定プロセスにおいて必要不可欠な存在として多くのクライアントから絶大な信頼を得ている。