ブリティッシュ・パイ・ウィーク 2019年3月4日〜10日
冬に食べたい英国自慢のパイ
英国の冬は暗くて長く、気分も落ち込んでしまいがち。こんな時期こそ、食べ応えのある温かい食事でエネルギーをチャージするのが1番だ。そこで今回は、英国のビールとの相性も抜群の「ブリティッシュ・パイ」をピックアップしてみた。オーナーたちの情熱とアイデアが詰まった王道パイから、時代の潮流にのったヴィーガン・パイまで、ロンドンで食べられる魅力的なパイをご紹介しよう。
取材:英国ニュースダイジェスト編集部 Windmill Mayfair、Piebury Corner Kings Cross / 宮田さち The Newman Arms、Young Vegans、F. Cooke
日本人の知らない
英国とパイの関係とは?
パイはスイーツだけじゃない!
「パイ」と聞くと、アップル・パイなどのデザートを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし英国では、お肉をたっぷり使ったご飯もののパイは「セイボリー・パイ」と呼ばれ、その種類はシェパーズ・パイ、フィッシュ・パイ、ポーク・パイ、スコッチ・パイなど、書き尽くせないほど実に豊富。英国人たちはとにかくパイを食べ、また自国を「パイ国家」などと称するほど、パイが大好きな国民なのだ。
現在の英国のパイは、北ヨーロッパでオイルの代わりにバターやラードを使って作ったものが原型だと伝えられているが、国内の各地域でさらに種類が枝分かれしていくので、その歴史は一言では言い表せない。しかし、シェイクスピアの悲劇「タイタス・アンドロニカス」で人肉パイが出てきたり、「イート・ハンブル・パイ」(屈辱を味わう)という英語のイディオムがあったり、快楽に繋がるという理由で政治家オリバー・クロムウェルがパイを禁止したりとパイは英国民の身近な存在として、深く愛されながらこの数世紀を共に歩んできた。
心躍るブリティッシュ・パイ・ウィーク
このように、英国人の食生活の一部になって久しいパイだが、パイをさらに楽しもうというイベント「ブリティッシュ・パイ・ウィーク」が3月にあることをご存知だろうか。もともとは食品会社が2007年に、パイの売上げ向上のために始めたキャンペーンだったが、年々認知度を上げ、昨年はパブでこの時期限定のパイを販売したり、ディスカウントを行ったりと、各店独自のサービスも実施された。
一方、今年は3月6日に開催される「ブリティッシュ・パイ・アワード」は、パイ提供者側にとって年に一度の大勝負のとき。毎年、英国中から集まったパイの順位を決めるこの大会は、パイの名誉を賭けて、パブやパン屋、また食品会社などが多大なる情熱を持ってパイを送り込む一大イベントとなっている。もし店内にこの賞状があったら、輝かしい栄冠を手にした証。おいしいパイを探す指針になるかもしれない。
英国ならではのパイが楽しめる ロンドンのおすすめ店
パイ・アワード受賞のパイでスタミナ補給
Windmill Mayfair
ウィンドミル・メイフェア
一見すると普通のパブだが、2階には色調の統一された家具が配され、パイの絵が飾られた特別な部屋「パイ・ルーム」がある、パイへの愛にあふれたお店。毎朝併設のキッチンで作られるパイは、同店が提供する数あるフードのなかで最も推しているメニューであり、その評価は前述のパイ・アワード受賞というお墨付きだ。イングランド南西部のドーセット産ラム肉をふんだんに使った「スロー・クックド・ドーセット・ラム・シェパーズ・パイ」は、ごろごろのラム肉とその上に載ったマッシュ・ポテトがしっとり合わさり、口の中ですっと溶け合うような柔らかさ。「ステーキ&キドニー スエット・ペストリー グレービー」は、国産の雄牛を使用した自慢の一品。臭みが少なくほろほろの食感で、人気の高いヤングスのスペシャル・エール(4.85ポンド)と一緒に飲んで英気を養うのが、スタッフのお勧めの食べ方だ。
Windmill Mayfair
6-8 Mill Street, London W1S 2AZOxford Circus駅より徒歩5分
TEL: 020 7491 8050
月~金 11:00-23:00 土 12:00-23:00 日 12:00-18:00
(食事のオーダーは月~土 12:00-22:00 日 12:00-17:00) www.windmillmayfair.co.uk
ビール醸造所直営のパブで本格的なエール・パイを
The Newman Arms
ザ・ニューマン・アームズ
創業1666年で、一度閉鎖された後、2010年に復活を遂げたロンドン東部のビール醸造所トルーマンズが、2018年に再オープンさせた直営のパブ。12種類の生ビール、4種類のカスク・エール(木樽で二次発酵させたエール)を常備し、そのほかゲスト・ビール(他社のビール)などバラエティーに富んだセレクションが自慢。ここでサーブされる「ステーキ&トルーマンズ・ランナー・エール・パイ」は、ボート型の器にパイ生地で蓋をし、風味を閉じ込めて焼き上げた一品。徹底した品質管理で信頼の置ける近隣の肉屋から取り寄せた牛肉を、ランナー・ベスト・ビターというビールで、タマネギなどの野菜と2時間半かけてじっくり煮込んだフィリングは、ビーフ・シチューのような深みのある味だ。付け合わせの季節野菜や、ほんのり甘いマッシュ・ポテトなど、サイドとのバランスも絶妙。
The Newman Arms
23 Rathbone Street, London W1T 1NGGoodge Street駅より徒歩5分
TEL: 020 7436 9777
月~金 12:00-23:30 土 17:00-23:30
https://www.thenewmanarms.co.uk
一人でも気兼ねなく利用できる居心地の良さ
Piebury Corner Kings Cross
パイバリー・コーナー・キングス・クロス
ロンドンに3店舗を構えるカジュアルなパイ専門店。客やデリバルーが途切れることなく訪れる人気の秘密は、オーナー、ポールさんの食に対する徹底したこだわりだ。「呑みながら食べるファスト・フード」をうたいつつも、サイドのサラダは甘みを感じられる新鮮な地産の野菜を使い、余ったパイはホームレスの人々に提供するなど、エシカルな経営でその規模を拡大してきた。種類豊富なパイは単品でもオーダー可能だが、サイドやグレービー・ソースがセットになったメニュー「ザ・パイバリー」がお得。なかでも「チキン、ハム&リーク」とレッド・ワイン・グレービーとのコンビは、柔らかいチキンとリーク、クリーミー・ソースたっぷりのパイに、グレービー・ソースが絡み合い、クセになる味わい。サイズも大きすぎず、少食な女性にもぜひ勧めたい。なお、平日の17時以降と週末はドリンク込みで別料金となる。
Piebury Corner Kings Cross
3 Caledonian Road, London N1 9DXKing's Cross駅より徒歩3分
TEL: 020 7688 2987
月~水 11:00-22:00 木・金 11:00-23:00 土 12:00-23:00 日 12:30- 20:00
https://pieburycorner.com
レべルの高い進化系ヴィーガン・パイ
Young Vegans
ヤング・ヴィーガンズ
カムデン・マーケット内の小さなパイ屋さんで、ロンドン初となる100%ヴィーガン・パイが売り。店内はカウンターのみだが、カジュアルなパイ屋と侮ることなかれ。「ヴィーガン・ステーキ&エール・パイ」はサクッとしたクラストに、あふれる肉汁……と言ってもステーキはもちろん牛肉ではなく、グルテンを主原料としたグルテン・ミートで作られている。トマト・ベースのソースで煮込んだちょっとスパイシーな味付けが、付け合わせのマッシュ・ポテトともよく合う。たっぷり振りかけられたカリカリのオニオン・フレークが食感に変化を生み出し、マッシュ・ポテトにアクセントを添えている。パイにかけられた濃厚なグレービーもまた美味だ。店内では、定番の6種類とグルテン・フリーのパイのほか、時期により季節物のパイが加わる。アップル・パイやチョコレート・クッキーなどのデザートも見逃せない。
Young Vegans
60 Camden Lock Place, London NW1 8AFCamden Town駅から徒歩6分
11:00-21:00 https://www.youngvegans.co.uk
ロンドンっ子の変わらない味
F. Cooke
エフ・クック
1862年、フレッド・クックさんがロンドン東部のベスナル・グリーンに創業して以来、長年に渡り労働者たちのお腹を満たしてきたパイ&マッシュ・ショップ。現在のホクストン店では4代目に当たるジョーさんが経営を続けている。内装のタイルが、レトロで素朴な印象だ。メニューはパイ&マッシュとウナギのみで、シンプルで飾らないパイに惹きつけられて通い続ける常連さんが多いという。最近のトレンドも取り入れてヴィーガン・パイを作っているものの、基本は代々受け継がれてきたレシピに忠実に作られているそう。グレービーの代わりにウナギから出汁を取ったスープに新鮮なパセリを加えて作ったリカーが特徴で、「グレービーはノーザンナーの食べ物」、グレービーやナイフの使用も邪道という。粗めのマッシュ・ポテトと合わせて、スプーンとフォークで気取らず食べたい。
F. Cooke
150 Hoxton Street, London N1 6SHHoxton駅から徒歩8分
TEL: 020 7729 7718
月~木 10:00-19:00 金・土 9:30-20:00
※現金支払いのみ可
Robins Pie & Mash£
14 High Street, London E11 2AJ
Wanstead駅
TEL: 020 8989 1988
www.robinspieandmash.com-
M.Manze£
87 Tower Bridge Road, London SE1 4TW
Borough駅
TEL: 020 7407 2985
www.manze.co.uk -
Battersea Pie Station£
28 The Market, London WC2E 8RA
Covent Garden駅
TEL: 020 7240 9566
www.batterseapiestation.co.uk -
Pie Republic ££
80 Upton Lane, London E7 9LW
Forest Gate駅
TEL: 020 8552 8245
www.pierepublic.co.uk -
Mother Mash ££
26 Ganton Street, London W1F 7QZ
Oxford Circus駅
TEL: 020 7494 9644
www.mothermash.co.uk -
The Old Bank of England £££
194 Fleet Street, London EC4A 2LT
Temple駅
TEL: 020 7430 2255
※2019年2月12日(火)まで休業 -
Putney Pies £££
2 Putney High Street, London SW15 1SL
Putney Bridge駅
TEL: 020 8780 2920
www.putneypies.co.uk
レストラン詳細 -
The Guinea Grill £££
30 Bruton Place, London W1J 6NL
Bond Street駅
TEL: 020 7409 1728
www.theguinea.co.uk -
Holborn Dining Room ££££
252 High Holborn, London WC1V 7EN
Holborn駅
TEL: 020 3747 8633
holborndiningroom.com -
The Ivy ££££
1-5 West Street, London WC2H 9NQ
Leicester Square駅
TEL: 020 7836 4751
www.the-ivy.co.uk -
Bob Bob Ricard££££
1 Upper James Street, London W1F 9DF
Oxford Circus駅
TEL: 020 3145 1000
www.bobbobricard.com
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