活動してきたグラフィック・アーティストの大石暁規氏。
スコットランドでの個展を控えた同氏に話を聞いた。
欧州大陸を拠点としてアート活動を長く続けていらっしゃいましたね。
日本で大学生をしていた頃から、欧州に憧れを抱いていました。デンマークへと初めての海外旅行に出掛けた19歳のときから、ずっとです。現在はエンジニアとして働く兄が当時、デンマークの研究施設でインターンシップをしていたんですよ。だから、私は夏休みとか冬休みを利用して兄の部屋にお邪魔して。北欧ならではのミニマルで洗練されたデザインを持つ家具を手に取ったり、地元の芸大生と交流しながら、強烈な刺激を受けました。
大石さんは、これまでデジタル・アートの第一人者として活動されてきた一方で、いわゆるアナログの技術も大事にされてきたように思えます。
鉛筆と紙さえあれば描ける、というアナログのアートの可能性には大きな魅力を感じています。一方のデジタル技術の素晴らしいところは、インタラクティブなことでしょう。絵を動かしたり、音楽の演奏と合わせたりといったことができる。つまり表現がアーティストを出発点とする一方通行ではなくて、鑑賞者や別のアーティストとコミュニケーションを取る手段になるのです。
私は、独り善がりのアーティストにはなりたくない。自分が絵を描くことを仕事として選んだ以上、その絵の表現を持って、つまり自分が描いた絵を通路として、他者とコミュニケーションを取ることができたら、と思っています。
大石さんの描く絵は、「かわいい」と表現されることが多いですね。また「かわいい」は、欧州の人々が日本の文化を表現する際に頻繁に使われる形容詞でもあります。
日本に住んでいると、確かに街中にかわいいものが溢れている。お堅いイメージのある銀行まで、かわいいロゴを使っていたりしますよね。そういう環境で育ってきたアーティストたちが、かわいいものに親しみを覚えるのはごく自然だと思います。
また私自身、暗いものよりも、描いていて、観ていて、楽しい絵を描きたいという気持ちがあります。正直なことを言うと、アート活動って非常に厳しいものなんです。ピカソに代表される19世紀の西洋画家たちが描いた絵は、そうした厳しい状況を反映したかのような暗い絵が多いような気がします。もちろん、それらも芸術表現の一つのあり方だとは思うけれども、私は、苦しい状況の中でそのままネガティブに表現するだけではつまらないと思う。前向きな作品に転化させたものこそ、私が求めるアートではないのかなと考えています。
会場に展示された、スコットランドのお城から
インスピレーションを受けた作品
パリの美術大学「エコール・エスティエンヌ」で開催した特別授業にて
1972年生まれ、京都市立芸術大学、IAMAS国際情報化学芸術アカデミー卒。フランス国際マルチメディア見本市「milia2001」新人賞受賞を機に渡欧。デザイン・スタジオ「Team Chman」(フランス)を経て、ECAL(スイス州立ローザンヌ美術大学)メディア & インタラクション・デザイン科で教鞭を執る。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品賞など受賞。現在、多摩美術大学などで情報デザイン非常勤講師を務めている。 http://aki-air.com
small pictures BIG IMAGINATION
国際交流基金ロンドン日本文化センターで開催される、大石氏の講演会。
参加は無料だが、要予約 。 申込み先:
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2010年11月17日(水)18:30
The Japan Foundation, London
Russell Square House
10-12 Russell Square WC1B 5EH
Akinori Oishi Solo Exhibition
スコットランド東部のアバテイ大学で開催のデジタル・アートの祭典「NEoN 10 Digital Arts Festival」の一環として行われる、大石氏の個展。
日時: 2010年11月11日(木)〜2011年1月28日(金)
場所: Hannah Maclure Centre University of Abertay Dundee
Top Floor, Abertay Student Centre
1-3 Bell Street DD1 1HP
Tel: 01382 308324
http://hannahmaclurecentre.abertay.ac.uk