TROOPING THE COLOURの基礎知識
5月にチャールズ国王の戴冠式が終わったばかりの英国。次の王室関連の大きなイベントは、Trooping the Colour(トゥルーピング・ザ・カラー)だ。在英の人にとってはすっかりおなじみのイベントかもしれないが、今回は君主が変わって初めてのトゥルーピング・ザ・カラーとなる。改めてその歴史や楽しみ方のポイントなど、基本的な情報をおさらいしよう。
6月17日(土)
バッキンガム宮殿周辺
https://kbp.army.mod.uk/
トゥルーピング・ザ・カラーの起源
トゥルーピング・ザ・カラーは、260年以上にわたって行われてきた英国の君主の公式誕生日を祝う軍事的なパレードだ。毎年6月には、1350人以上の兵士、200頭の馬、300人以上で構成される音楽隊などが、軍隊の規則だった正確な動きや馬術、華やかな合奏を披露する。このパレードは、チャールズ2世の治世(1660~85年)に初めて行われたと考えられている。1748年に、同パレードがジョージ2世の公式誕生日の祝賀行事として決定され、1760年にジョージ3世の即位以降、毎年恒例のイベントとなった。また、参加部隊の近衛歩兵隊は、英陸軍で最も古い連隊の一つだ。イングランドでチャールズ2世が復位し、それまでの共和制から王政に戻った1660年以来、君主の個人的なボディーガードとして任務を果たしている。
「カラー」の意味
「カラー」(Colour)は英陸軍を構成するさまざまな連隊が持つ旗を指す。カラーには各部隊の記章や、その部隊が戦い、健闘した歴史的な場所を記した名誉勲章(Battle Honours)がデザインされており、隊よって色やデザインが大きく異なる。今のように無線通信がない時代、兵士たちは戦場で必死に戦ううちに、方向感覚を失いとんでもないところに行ってしまうことはよくあることだった。カラーは、兵士が遠くから所属部隊を簡単に見つけられるようにするため、また所属兵士を一致団結させるために重要なもので、戦闘前に若い将校が部隊の前をカラーを目立つように動かしながら歩き、兵士たちは自分のカラーがどれかを確認できるようにした。この一連の動きが、今日までトゥルーピング・ザ・カラーとして残っている。
「公式誕生日」とは?
現在の国王チャールズ3世の本当の誕生日は1948年11月14日。しかし、今回の祝賀行事のように6月にもKing's Birthday、Sovereign's Birthdayと呼ばれる「公式誕生日」がある。君主が二つの誕生日をもつ習慣は、ジョージ2世統治下の1748年に始まる。ジョージ2世の誕生日はチャールズ国王と同じ11月だったが、ただでさえ雨が降りやすい英国の気候のなかでも天候が一層悪い秋。最悪のコンディションが危惧され、夏に行われるトゥルーピング・ザ・カラーと祝賀イベントを組み合わせることになった。以降この伝統は今日まで受け継がれており、故エリザベス女王のときは6月の第2木曜日を公式誕生日としていた。チャールズ国王の今年の公式誕生日は6月17日だが、来年はまた少し日付がずれると予想されている。
当日の流れと楽しみ方
一連のパレードは9時ごろから馬車に乗った王室メンバーとともにバッキンガム宮殿を出発し、ザ・マルを通って、セント・ジェームズ・パーク前のホース・ガーズ・パレード(Horse Guards Parade)まで移動。10時からトゥルーピング・ザ・カラーが始まり、12時25分までに終了。その後、チャールズ国王たちはホワイト・ホールを経てバッキンガム宮殿へ戻る。チャールズ国王は軍隊に向かって敬礼し、その後バルコニーに王室メンバーと共に現れ、13時の英空軍のフライパスで終わる。ホース・ガーズ・パレードのスタンド席のチケットは完売してしまったので、パレードのルート沿いに早めに行くか、自宅でBBCの生中継を楽しむのが良い。