福島産農産物の
安全性を世界に発信! 在英日本大使館でレセプションが開催
さる3月22日、ロンドンの在英日本大使館において、「ふくしまフード・プライド」と銘打った、福島県と同大使館主催のレセプションが開催された。同イベントは、東日本大震災から7年が経過した現在も大きな問題となっている原発事故の風評を払拭し、福島の農産物の安全性や質の高さを、英国の人々にアピールするというもの。レセプションの様子をレポートする。
ステージで握手をかわす鶴岡公二駐英大使(写真左)と内堀雅雄福島県知事(同中央)、在英福島県人会「ロンドンしゃくなげ会」の満山喜郎会長(同右)。
FUKUSHIMA FOOD PRIDE
ふくしまフード・プライド
ロンドンの在英日本大使館で3月22日、福島県の内堀雅雄知事を迎えて、立食スタイルのレセプション「ふくしまフード・プライド・ア・ナイト・イン・ロンドン」が華やかに開催された。同レセプションには、英国会議員や英食業界の関係者を始め、ロンドン在住の日本人を含めた200人以上が出席。粒が大きくしっかりした食感が特徴の福島産米「天のつぶ」を使った寿司や、福島和牛のたたき、キノコ料理など福島の食材を使った料理を堪能した。
大使館内ボールルームにて、福島の食材を使った料理を楽しむ出席者たち。
福島県が誇る日本酒の数々が振る舞われた。
今回の内堀知事の訪英は、昨年12月に欧州連合(EU)が、2011年の原発事故以来日本産食品に課されている輸入規制対象から、福島県産の米などの食品を除外したことを受けてのこと。福島の農産物の安全性を日本国外に向けてPRすることが目的だ。
レセプションの冒頭のスピーチにおいて知事は、英国に住む人々に向けて、福島の復興に対する支援への深い感謝の気持ちを伝えるとともに、「いまだに福島県民の約5万人が、避難生活を強いられている。また食の安全を裏付ける放射性物質モニタリングの結果を、オンラインや新聞で公表するシステムなども構築されているが、福島県の農産物の価格は依然として回復していない」と述べた。
その一方で知事は、復興事業は確実に進んでいると強調。「福島県はここ数年、廃炉ロボットなどの研究開発を促進し、新たな産業の創出としてロボット関連産業の振興に取り組んでいる」と流暢な英語で語り、クリエイティブな視点で復興が行われている福島県の現状を力強くアピールした。同県は、災害対策、物流、農業、福祉など各分野で活躍するロボット産業の地とする「イノベーション・コースト構想」を掲げ、2020年、「ワールド・ロボット・サミット」の会場の一つとして、一部のロボット競技を同地で開催することが決定している。
レセプションに出席した、日本食のスペシャリストであり英国で「英国日本酒協会」を主宰するシャーリー・ブース氏は「大災害を乗り越えて、現在も変わらず質の高い日本酒を醸している福島県の多くの酒蔵には、敬意の念を禁じ得ない」と語り、英国内外でワイン評論家として活躍するアンソニー・ローズ氏は、「寿司や牛のたたきなど、今晩供された福島の食品はどれも素晴らしかった。多くの英国人は、福島の農産物が安全であると理解していると思う」と話した。
好評だった、福島県産米「天のつぶ」を使用した握り寿司。
良質な霜降りで定評がある福島牛をたたきにした一品。
こうした福島県をPR する海外での精力的なイベントが、日本国内での風評を回復させる一つの大きな機動力となると語るのは、在英福島県人会「ロンドンしゃくなげ会」の満山喜郎会長だ。氏は、震災の翌年2012年に、世界各国に点在する福島県人会が一致団結し、世界22カ国の35の県人会からなる「ワールド県人会」の会長でもある。「福島が復興に向けて何かやっている、安全であるということを常に海外で発信していくことが、風評の払拭につながる。海外発のこうしたイベントのニュースが日本でも報道され、話題になることによって、日本人の福島に対する懸念が軽減されることを期待している」と語る。
またローズ氏は、「7年前の大惨事は誰も忘れることはできないし、忘れてもいけない。でも、福島産の日本酒や食品の質の高さはもう認知されている。震災が生み出すネガティブなイメージを前面に出すのではなく、今後ポジティブなコミュニケーションができることを望む」と付け加えた。内堀福島県知事がレセプションでのスピーチでその一部を引用した、福島県出身の世界的な医師、細菌学者、野口英世の名言、「過去を変えることはできないし、変えようとも思わない。なぜなら人生で変えることができるのは、自分と未来だけだからだ」。この言葉は、この日大使館に訪れた人々の心を、しっかりと捉えたようだ。
福島県にアトリエを構える書道家、千葉清藍氏のパフォーマンスも行われた。
会場内には、福島県産米や福島名産のあんぽ柿などを紹介したパネルを設置。