英国の歴史や時勢を反映する
2018年記念コインに注目
1100年以上の歴史を誇る、英王立造幣局。同局は毎年、その年にまつわるトピックスや、王室関係の祭事にちなんだ意匠を刻印した記念コインを鋳造し、「アニュアル・セット」として発行している。コイン・コレクターが毎年熱い視線を送る記念コイン・コレクションの、2018年版を紹介する。
アニュアル・セット2018年
Annual Coin Set: The 2018 United Kingdom
5種類の記念コインに、現在英国で流通している
8種類のコインが付いて、55ポンド。
そのほか、特別な加工を施したプルーフ貨幣のセットなどもある。
英王立造幣局 The Royal Mint
創設は886年。英国内で流通する全種類の貨幣、
また英軍のメダルやコレクター向けのコインなどを
鋳造、発行するだけでなく、他国の造幣も担う世界屈指の造幣局。
1967年、工場をロンドンから南ウェールズに移転し、現在に至る。
www.royalmint.com
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「フランケンシュタイン」生誕200周年
Mary Shelley’s Frankenstein
19世紀に活躍した英国の小説家、メアリー・シェリーが1818年1月1日に発表したゴシック・ホラー小説「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」。同小説は、1816年、18歳であったメアリーが、後に夫となる詩人のパーシー・ビッシュ・シェリーやバイロンたちと滞在していたスイスの別荘で語られた、怪奇譚から発想を得て書かれたという。ティーンエイジャーの女の子の悪夢が生み出した、同書に登場する名前のないモンスターは、200年を経た現在でも世界中で広く愛されている。記念コインの中央には、デザイン化された「フランケンシュタイン」の文字が刻印されている。
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第一次大戦、休戦100周年
First World War Armistice
1918年11月11日、パリの北部に位置するコンピエーニュの森でドイツと連合国の間で休戦協定が結ばれ、1914年以来、戦禍に見舞われていた世界各地に和平がもたらされた。同日11時に、この休戦協定調印のニュースが英国に届けられ、ビッグ・ベンや教会の鐘がロンドンの街に響いたという。休戦を迎えたとはいえ、米国や日本も含む多くの国々を巻き込んだ大戦。記念コインには「THE TRUTH UNTOLD THE PITY OF WAR」と刻印され、第一次大戦が世界の人々に与えた傷痕の深さを物語る。
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王立空軍設立100周年
Royal Air Force
「英空軍の父」と称されるヒュー・トレンチャード(後の初代トレンチャード子爵)を参謀長として、第一次大戦中の1918年4月1日に設立された王立空軍。世界で最も長い歴史を持つ空軍であり、設立当時から現在に至るまで、最新のテクノロジーを駆使した戦闘機を擁することで広く知られている。コインに刻印されているラテン語「PER ARDUA AD ASTRA(Through struggles to the stars)」は王立空軍のモットーで、「困難を克服して星のように輝く」といった意味を持つ。
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女性が投票権を獲得した
国民代表法制定100周年
Representation of the People Act 1918
女性参政権獲得を標榜する女性団体のメンバーで、戦闘的な活動も躊躇しなかった「サフラジェット」など、20世紀初頭から女性の政治参加を求める人々の活動が各地で展開されていた英国。そしてとうとう1918年に「国民代表法(Representation of the People Act 2018)」が制定され、21歳以上のすべての男性と、30歳以上の一部の女性に投票権が与えられた。近代の民主主義の根幹をなす大きな節目として認知されている同法制定100年を記念し、コインには女性参政権獲得のために立ち向かう人々の意匠が刻印されている。
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ジョージ王子、今年で5歳に
Prince George of Cambridge
今年の7月22日で5歳を迎える、ウィリアム王子と同夫人キャサリン夫妻の長男、ジョージ王子。王子のすこやかな成長を祝して鋳造された、直径約39ミリの5ポンド記念コイン。昨年の9月、ロンドンの私立小学校に入学したジョージ王子のキュートな制服姿が世界中のメディアを賑わしたことは記憶に新しい。記念コインは、王子の名前にちなんで、イングランドの守護聖人の聖ジョージとドラゴンが刻印されている。
Photos: With kind permission of The Royal Mint