大小含め10以上のスーパーマーケットがチェーン店展開を広げるスーパー激戦地の英国。安売り専門店から高級志向ショップまで、各スーパーは様々なスタイルで顧客の獲得に努めている。その中でも比較的街中でよく見かける4つのスーパーマーケットを選び、比較調査を実施。身近なものだからこそ、徹底的に研究してワンランク上の快適な生活を送りたい。(宮田さち) 取り扱う全ての商品が自社ブランドという特徴のある高級スーパーマーケット。衣料品販売なども展開しており、その分野においては売上額英国一の座を誇る。M&S、マークスなどとも呼ばれ、英国民に親しまれているスーパー。世界30カ国に450の支店を持つ。食品の広告に使われるキャッチフレーズは「This Is Not Just Food, This Is M&S Food」。 ロシア生まれのユダヤ系ポーランド人の移民、マイケル・マークスが1884年、リーズにM&Sの原点となる会社を創立したのが起こり。1894年には、英北西部マンチェスターに最初の店舗をオープンさせた。店名は、マークスと彼のパートナー、トム・スペンサーの苗字に由来する。1997、98年に英国小売業界にて頂点に立った後、数年間の経営難に陥っていたが、経営方針の見直しなどにより売上は徐々に回復している。 M&Sは利用客に大変寛大な商品の返品サービスを行っており、レシート持参での90日以内の返品の場合はすぐに返金、レシートがない場合でも、返品後12カ月有効なストア・クレジットとして返してもらえる。 また企業の社会的責任を重要視し、自然環境の保護を考慮して製造された健康的な商品を、スタッフの働きやすい環境で販売する、という理想を追求している。ビジネス・イン・ザ・コミュニティーの2006年度カンパニー・オブ・ザ・イヤー、RSPCA(王立動物虐待防止協会)のオータナティブ・アワーズを受賞。コーヒー・紅茶は全てフェア・トレード商品、卵はフリーレンジのみ、と厳しく正しく商売しているスーパーだ。
上・中流階級の客層をターゲットに、高品質の食品とサービスを良心的なお値段で提供する高級スーパーマーケット。やはり優等生のイメージのあるデパート、ジョン・ルイスの傘下グループであり、エリザベス2世のロイヤル・ワラントを持つ、王室御用達のスーパーである。英国民の好きな小売店としても、ジョン・ルイスに次いで2位に選ばれている。スローガンは「Quality food, Honestly Priced」。従業員は皆シェアホルダーであり(パートナーと呼ばれる)、売り上げは彼らの給与に直接反映されるというユニークな経営方針を採っていることでも知られている。 創業は1904年。ウォレス・ウェイト、アーサー・ローズ、デービッド・テイラーの3人が西ロンドンに小さな食料品店をオープンしたのが始まりだ。1937年にジョン・ルイスの傘下に入り、1955年にはロンドン南部のストレッチャムにスーパーマーケットとしての1号店を開店した。 メリルボーン店のマネージャー、エド・バートンさん(勤続年数10年)によると、「ウェイトローズの自慢は、素晴らしいスタッフ(パートナー)たち」。各店鋪ではスタッフ一人一人が、ウェイトローズの一員であることに誇りを持ち、責任感溢れる態度でお客様にサービスを提供しているという。また、「商品に関しては、国際性豊かな品揃えが自慢」とのこと。店のモットーは『高品質を良心的価格で』だが、バートンさんはこれに『専門的なサービス』の一言を付け加えたいそうだ。確かにウェイトローズでは、スタッフに商品の場所を尋ねると、その棚までわざわざ案内してくれ、さらには商品を手渡ししてくれることが多い。こうしたちょっとしたサービスを徹底させ、他スーパーとの差別化を図っているのだ。
人気シェフ、ジェイミー・オリバーが登場するCMでお馴染みのこのスーパーは、実は長い歴史を持つ老舗だ。95年にテスコにその座を奪われるまで、食料品売り上げナンバー1を誇っていた。現在はアスダに次いで第3位。スローガンは「Try Something New Today」。 創業者のジョン・ジェームズ・セインズベリーが1869年、ロンドン中心部のドルーリー・レーンに妻と共に乳製品を扱う小さな店をオープンさせたのが始まり。彼は店舗を4つに増やした後、1882年にクロイドンに最初のスーパーマーケットを開店させた。高級感の漂う内装に高品質の商品とサービスで安売り店とは一線を画したのが、中流階級の顧客に受け人気となった。1950年に初のセルフサービス形式の店舗を開店し、20世紀の英国スーパー業界をリードするが、安いだけでなく、品質も向上したテスコに追い越されてしまった。巻き返しを図るため、2000年にジェイミー・オリバーを広告の顔として起用して若い客層にアピール、さらに2004年には最高責任者にジャスティン・キング氏を迎え大改革を行った。 国際色豊かな幅広い品揃えが特徴で、パスタ、チーズなど、グルメ食材が充実している。和食素材もオリジナルで販売しているのはセインズベリーだけ(でもこれが結構高いのだが)。 セインズベリーのウェブサイトによると、よりよい生活作りのため、健康、安全、品質面において、利用客が期待する以上のサービスを食卓に届けることを目標としているようだ。
今回取り上げたスーパーマーケットの中で、最も幅広い層からの支持を得ているチェーン店。労働者階級と中流階級の両方をターゲットにし、成功を収めている英国では珍しいスーパーマーケットである。英国食品販売専門誌「ザ・グローサー」が優れたスーパーに贈る「英国民に最も愛されているスーパー」賞、「ベスト・オンライン・ショップ」賞ほか計3冠を手にしている。英国内最大、世界規模で見ても売上第4位の座につく超大手で、事業も食品、衣料品、電化製品などの販売にとどまらず、保険やローンなどの金融サービス、DVDレンタル、音楽ダウンロード、インターネット・プロバイダー、電話会社など幅広く展開している。英国外においてもヨーロッパはもちろんのこと、日本を含むアジアの計11カ国でも事業を営む。スローガンは「Every Little Helps」。 ユダヤ系ポーランド人の仕立屋の息子、ジャック・コーエンが創業。1919年、ロンドン、イーストエンドの屋台で始めた食品販売が成功し、10年後にエッジウェアに初の店舗、「テスコ」をオープンさせた。90年代に入り、強引とも批判される方法で店舗数を増やし、業界1位の座に付く。また、ロイヤリティー・カードやオンライン・フード・ショッピングなど、数々の業界初のサービスを導入してきたことでも知られている。 1997年最高責任者に就任して以来、テスコを成功に導いてきたテリー・リー卿は、「Treat People How We Like To Be Treated」などをモットーに掲げ、カスタマー・サービスに力を入れている。
今回取り上げたスーパーマーケットそれぞれに個性があると分かった所で、さらにいくつかのテーマ別に(勝手に)比較検討してみました。スーパー選びの参考にどうぞ。まずは、ポッシュ度と便利度(5段階評価)のグラフから。 ポッシュ度では女王御用達のウェイトローズと、品質と製造過程にこだわったオリジナル商品をそれなりのお値段で販売するM&Sに満点を付けたい。分かりやすい広告で庶民に値段の安さをアピールするテスコはちょっとポッシュ度には欠ける。セインズベリーはその中間といったところ。 便利度はほぼ反比例と言ってもよいが、幅広い客層のニーズに応えて様々な商品展開とサービスを提供するテスコを評価。しかし大満足とはいかないので、ちょっと引かせてもらった。逆に(生活にゆとりのある)特定の客層をターゲットにしたM&Sは、それ以外の客層にはちょっと使いにくい。
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テスコ |
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セインズベリー |
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ウェイトローズ |
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M&S |
ダントツでテスコが1位。基本的に安い価格設定の商品が多い上、半額などのプロモーションもよく行っている。テスコ独自の「Price Check(毎週テスコ、セインズベリー、アスダ、モリソンの4大スーパーの商品について販売価格を調査、ウェブサイトで公開している)」によると、アスダと比べてテスコの方が安い商品が1547点、高い商品が1177点となっている(2007年1月8〜10日調べ)。しかしながら、「ザ・グローサー」誌が実施した33商品の値段調査によるとアスダが最安スーパーということになっているので、ちょっとナゾではあるが……。2位はセインズベリーとウェイトローズ。セインズベリーは安いラインのオリジナル・ブランドを出しており、安いものは安いのだが、逆に高いものは極端に高い。ウェイトローズは、全般的に見ると意外に高くはない。ということで4位はなんでも高めのM&S。
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ウェイトローズ |
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セインズベリー |
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テスコ |
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M&S |
一概には決められないが、イタリアン、フレンチといったお洒落な香りがする食品類に関しては素晴らしい品揃えを誇るウェイトローズが1位か。パスタ、チーズ、加えてワインの種類の多さは拍手モノ。ちなみに「ザ・グローサー」誌によるとウェイトローズは品切れ度が一番低いスーパーでもある。ほぼ同じ路線のセインズベリーは僅差で2位。同じく2位のテスコは、アジアン・カリビアンというように店舗のある地域の住民の文化を反映した品揃えに強い。両店とも、オリジナル・ブランドに安いラインと高級ラインを展開し、これも選択の幅の広さにはつながる。4位はまたまたM&S。元々オリジナル・ブランドしか販売しないので、バリエーションにはちょっと欠ける。サンドイッチやレディ・ミールは種類が豊富だが、例えばウェイトローズでは30種類もあるドライ・パスタがわずか8種類とはちょっと寂しい。
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テスコ |
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セインズベリー |
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M&S |
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ウェイトローズ |
どんなに素敵なお店でも遠ければ行きにくい、開いてなければしょうがない。さて、行きやすいスーパー第1位の座を射止めたのは、テスコ。英国内で合計1897店舗と圧倒的な店舗数を誇り、カバー・エリアは広い。また、郊外型の店舗は週日24時間営業を行う一方、コンビニ型のエクスプレスは、午前7時から午後11時まで営業している。同様の経営スタイルを持つが、752店舗展開と店舗数で負けたのがセインズベリー。3位はM&S。637店舗のうち、187店舗あるコンビニ型の「Simply Food」は英国内の主要駅構内に設置されていることも多く、旅行中のスナックやお勤め帰りの夕食の購入などに、お役立ち度が高い。4位はウェイトローズ。184店舗と店舗数も少なく、基本的にお上品なエリアにしか見られないので、それ以外の地域に住んでいる人にはあまり行く機会がないかも。がんばれ、ウェイトローズ!
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M&S |
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テスコ |
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ウェイトローズ |
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セインズベリー |
環境への関心が高まる今のご時勢、スーパーもグリーン度を積極的にアピールしている。この分野の1位はM&S。ちょっとお洒落なオリジナル・ショッピング・バッグでも知られるM&Sは最近思い切ったエコロジー方針を発表した。それは、2億ポンド(約480億円)を投資し、今後5年の間に、二酸化炭素排出量0を目指すと言うもの。その直後テスコも対抗し、5億ポンド(約1200億円)を注ぎこんだ同様のプランを発表。ウェイトローズ(ジョン・ルイス・パートナーシップ)は2010年までに10%、セインズベリーは2008年4月までに5%、それぞれ二酸化炭素排出量を減らすことを目指している。計画倒れに終わらないよう、皆さんがんばってください、ということでM&S以外皆2位に付けておこう。いずれのスーパーマーケットも買物袋やクリスマス・カードのリサイクルを奨励するなど、環境保護に励んでいる。
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ウェイトローズ |
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M&S |
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セインズベリー |
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テスコ |
英国人の大好きな慈善事業。スーパーもただ商品を客に売るだけではダメなのだ。チャリティー度1位はウェイトローズ。ウェイトローズ基金を2005年に設立、対象商品の売り上げを寄付し、南アフリカの果物農家の人々がより良い労働環境を得ることが出来るよう貢献している。また、同社が展開するインターネット・プロバイダー事業では、経費を除く全ての収益がチャリティー団体(4つから選べる)に寄付されることになっている。2位はM&S。昨年はクリスマス時期にホームレス救済のためのプロモーションを行い、その売り上げから寄付を行っている。セインズベリーはより健康な子供を育成するため、学校に運動器具などを寄付しており、またテスコは、障害のある子供のためのチャリティーや地域を意識したチャリティー活動を行っているということで同点3位。いずれのスーパーでも多くのフェアトレード商品を扱っている。
M&S、ウェイトローズ、トリビア集 高級スーパーがより身近に!? ● M&Sは90年代半ばまで、TVコマーシャルは利用しなかった。 ● M&Sの2代目経営者、サイモン・マークスと友人イズラエル・シエフのイニシャルもM&Sに当てはまる。 ● M&Sの創業者、マイケル・マークスはリーズのマーケットで全て1ペニーというストールを開いていた。 ● M&Sで見つけた「Chilli Rice Cracker Mix」は、かなーりスパイシーな揚げせんべい。しかしパッケージの「ローソン鶴巻店」って……? タイ製だし……(写真) ● ウェイトローズで販売されているスシのメーカー、TAIKO FOODSはチャンネル4の人気番組、「ビッグ・ブラザー」のオフィシャル・スシ・サプライヤーである ● ウェイトローズとジョン・ルイスの発行するクレジット・カード(パートナーシップ・カード)のオンラインでのアプリケーション・フォームのタイトル欄で選べるタイトルはDoctor、Reverend、Captain、Major、Lady、Lord等など計18種類。庶民には敷居が高い。(ちなみにM&Sのカードの場合はDr、Lady、Revなど計8種類) ● ウェイトローズで見つけたこんなもの。本格的グルメな食品ばかりが陳列されているイメージのあるウェイトローズだが、グルメとは程遠い、アルデンテを真っ向から否定するふにゃふにゃの「缶スパゲティー」も販売されている。 |
各スーパーのオリジナル商品についてもいくつかピックアップして(やはり勝手に)比較検討。今回は、ドリンクからデザートまで£10で収まる コースを設定して、値段、品質などを調査しました。ただし、美味しいと思う基準は個人的見解によるものなので、あしからず。
一時帰国にも本帰国にも、おみやげを欠かせないのが日本人の悲しい性。ハロッズやフォートナム&メイソンの高級紅茶もいいけれど、スーパーで、あげて楽しい、もらってうれしい、そしてちょっと差がつく(比較的安価な)おみやげを探してみよう。
M&S Milk Chocolate Racing Cars £3.09 車とチョコレートが好きな彼へ。スーパーカー型の缶にはカラフルな同型のチョコレートが7つ。かわいくて食べるのがもったいない! |
ウェイトローズ Chocolate Mini Eggs £0.59 その他大勢の方へ。かわいらしい卵型のチョコレート。お求め安い価格なので、お配り用にどうぞ。 |
ウェイトローズ Sardine al Limone £0.85 ハイソな常備品として。かわいいパッケージに釣られて買ってしまいがちなイワシ缶。レモン風味でちょっとお洒落。 |
セインズベリー ジェイミー・オリバー商品 Green Pesto £2.49 料理初心者の彼へ。日本でもまだまだ人気の(?)ジェイミー・オリバー、オリジナル商品。混ぜるだけで美味しいパスタが作れるグリーン・ペストと、ミル付きの黒こしょう。この他にもいろいろあり。 |
テスコ Charlie and Lola, But excuse ME THAT is my book £3.97 お子様、および子供の心を忘れない大人の方々へ。スーパーで買えるおみやげは食品ばかりではない。テスコでは本も安く販売しているのです。個性的なイラストレーションで子供ばかりでなく、大人も楽しめる絵本。 |
テスコ オーブン・グラブ £3.47 かわいく楽しく料理したい彼女へ。大型スーパーではキッチン、インテリア雑貨も豊富。安くてかわいい、そして実用的なおみやげを探してみよう。写真は日本ではちょっと珍しいダブル・オーブン・グラブ。 |
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