ニュースダイジェストの制作業務
Sat, 23 August 2025

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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英国流おすそ分け

英国流おすそ分け

今年は夏の来るのが早かったのと、日差しの強い日が多かったせいか、すでにブラックベリーの実をあちこちで見かけます。例年なら8月後半に色づくはずの実が1カ月も早く熟しているのに気づいて、さっそく娘とフォラジング(Foraging)にでかけました。同じようにブラックベリー摘みをしているシニアご夫婦を見つけ「今年は実るのが早いですね」「私たちは毎年たくさん摘んで冷凍庫で保存しておくのよ」などとおしゃべり。

そういえば、野生の植物ではありませんが、お隣さんのリンゴの木も例年より早く、すでにびっしりと実をつけていて、昨日はその家の歩道脇のところにたくさんのリンゴが入った段ボールが置いてありました。そこには「ご自由にどうぞ」と書かれた紙が貼られていて、通りすがりのご近所さんたちが、二つ、三つと持っていっていたようです。

これはウィンドフォール(windfall)と呼ばれる秋の実りを、近所の人にもシェアしよう、という英国の人々の習慣です。わざわざ隣家のドアをノックして、リンゴを手渡ししたりはしないけれど、たくさん採れたリンゴを家の前に置いておき、自由に持っていってもらう。押し付けがましくもなく、でも、ガーデンの実りを人にもシェアしたい、というのは、英国らしいやり方だなと思います。何より英国では庭にリンゴの木を植えている家庭が少なくないですし、リンゴならこうして家の前に置いておいてもつぶれたりする心配もないので、おすそ分けにはぴったりです。


以前、ロンドン郊外で住んでいたときのわが家にも大きなリンゴの木が3 本ありました。英国にはブラムリーという、生で食べるには適さないけれど、お菓子や料理に使うと最高においしいクッキング・アップルと呼ばれるリンゴがありますが、わが家のは赤ちゃんの拳ほどの大きさのコックス・オレンジ・ピピンという品種。酸味と甘み、そしてほのかな芳香もあり、とてもおいしく、英国人に人気のリンゴです。秋になると拾うのも大変というくらいに小さなリンゴがたわわに実ったのですが、完全無農薬(つまりほったらかし)で育てていたため、芯の部分に虫がいることが多く、箱に入れておすそ分けするのにはちょっとはばかられる気がしました。なので、虫喰い部分を取り除いたリンゴを刻んで、チーズやサンドイッチによく合うアップル・チャットニーをつくりました。このチャットニーは、以前コラム「英国の口福を探して」でご紹介した、義母の母から受け継がれたレシピです。

瓶詰めにしたチャットニーは、友人や家の修理に来てくれたビルダーさんなどにプレゼント。わが家流のウィンドフォールのおすそ分けのやり方でした。今の家にはリンゴの木がないので、お隣さんからのおすそ分けをありがたくいただいています。

 

マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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