101
「ワーク」より「ライフ」優先
先日、私が共同主宰している英国在住の日本人コミュニティーのオンライン交流会を開催しました。英国全土からミーティングに参加してくださったメンバーは、1カ月半から28年と、人によって在英歴にはかなり違いがありました。また、英国に住むようになった理由も、現在やっている仕事もさまざまで、同じ英国に暮らす日本人とはいえ、その多様性を感じられた時間でした。
みんなで英国の好きなところ、良いところなどを話して盛り上がったのですが、その中である方が「英国の人って、ワーク・ライフ・バランスでいうと、ライフ重視の人が多くないですか?」とおっしゃいました。それに対して、ほかの方たちがそれぞれの体験を交えた考えを語っていたのですが、多くの方が英国の人たちは残業をほとんどしないという意見で一致していました。
もちろん職種にもよりますが、確かにこの国では深夜残業が当たり前のブラック企業問題などを聞くことはあまりありません。また、残業をすることは仕事をたくさんしている、という認識では全くありません。当然のことながら、日本のように「上司や同僚がまだ残っているから、自分だけ定時で帰りにくい」といった気遣いも必要ありません。やるべきことをきちんとやっていれば定時に帰るのは当たり前。いえ、中にはやるべきことをやっていなくても、定時にはわれ先にとばかりに会社を出る人がいるのも英国の特徴といえるかもしれません。
とはいえ、かつての英国では「働くために生きるか、生きるために働くか」という議論において、伝統的に前者の考え方が大勢だったといいます。ところが、ロンドン・キングス・カレッジが行ったリサーチによると、2022年に調査に参加した英国人の5分の1近くが、「仕事は人生において重要ではない」と答えていて、これはフランス、スウェーデン、アメリカ、ナイジェリア、日本、中国を含む24カ国の中で最も高い割合だったそうです。また同調査では、余暇(ホリデー)よりも仕事が常に優先されるべきであると答えた人が最も少なかったのが英国でした。
確かに私の知人たちを見ていても、会社勤めの人でも18時前には家に帰って家族とご飯を一緒に食べている人が少なくないですし、仕事柄そうできない家庭でも、家族との時間を最優先している人がほとんどです。また、やるべき仕事さえちゃんとやっていれば定時に帰るのは当たり前で、本コラム第27回で紹介したように、長期ホリデー取得も必須とのこと。
先日の交流会では、こうした英国流の暮らし方が心地良い、楽でいい、と感じている方が多かったような印象でした。さて、あなたの英国でのワーク・ライフ・バランスはいかがですか?