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優しい英国人
2020年8月に連載を開始したこのコラムは、今回が連載100回の記念号となります! 自分でも、こんなに多くの「英国の愛しきギャップ」を見つけられたことに驚いています。いつもネタ探しに協力してくれる家族や編集部Sさんに感謝です。
ということで、記念すべき100回目の今回は、英国の人々の優しさについてお話ししたいと思います。
私がロンドンに住みだしてすぐのころ「すてきだな」と思ったのが、次の人のためにお店や学校など、建物のドアを押さえて待ってくれていることでした。時々、まだかなり離れたところにいる私のためにドアを押さえて待ってくれている方がいて、思わず小走りしてドアにたどり着くという、ちょっと笑ってしまうようなことも起こります。でも、皆がいつも急いでいて、エレベーターに乗ったら「閉」ボタンを押すのがデフォルトという東京からやって来た私には、どんな場所でもどんな人でも、必ず次の人のためにドアを押さえて待つ英国の人々は、なんと心に余裕があるのだろう、と感激したのでした。
実はこれ、2008年にJT(日本たばこ産業)による「イギリス/思いやりの扉」篇というコマーシャルでも紹介されていました。そこで流れる「ロンドンでは、次に来る人のためにドアを開けて待っていてくれる。『人を思いやる』という習慣が、深く、根づいているのだ」というナレーションは、英国暮らしの身にはしっくりきたものです。
ほかにも、双子が幼いころのこと。ダブル・バギーに子どもたちを乗せてバスを待っていると、周りの人が次々手を出して私たちがバスに乗るのを手伝ってもらったことは一度ではありません。あるときには、スーツケースを抱えて地下鉄の階段を登ろうとしていたところ、後ろからさっとスーツケースを持って、あっという間に運んでくれた老紳士もいました。
また、42歳という年齢で双子を出産したのち、近くに頼れる家族もおらず、産後鬱と更年期症状で育児に困難を感じていたときのこと。地元に住むボランティアの方が1週間に1回、家に来てくれて、子どもたちに本を読んでくれたり、外出もままならず孤独だった私の話し相手になってくれました。
英国の人が優しい行動を取る理由。それは、そういう経験をし、あるいは教育を受けているからでしょう。親はもちろん、社会の中で、周りの人がしている行為を見たり、自分が優しくされたことで、自分もそうするようになる。
今の私は、やはりドアは開けて待っておくし、子ども連れの人に声を掛けるようにしています。それはやはり英国の人たちから学んだからだと感じています。