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フットボール狂想曲
原稿執筆時の7月半ばになって、パリ開催のオリンピックについて、「ようやく」盛り上がりを見せ始めた英国。というのも、7月14日に欧州選手権(ユーロ)2024の決勝戦が終わったからです。多くの在英邦人の方が賛成してくれると思うのですが、英国ではオリンピックよりもフットボールの大会の方が断然重要視されているという気がします。
ちなみに、今回のユーロ2024で、イングランド・チームは決勝戦でスペインに敗退。2021年7月11日にロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されたユーロ2020(パンデミックの影響で、大会が1年延期)の決勝戦でも、PK戦で敗れたイングランドは2大会続けての決勝戦敗退となりました。
前回のときもそうでしたが、決勝トーナメントに進むころには、国内のメディアでは「It's coming home(Football's coming home)」というフレーズが何度も使われ、フットボール(のトロフィー=栄誉)がその生誕地(イングランド)に帰ってくるという期待感が高まっていました。1966年のワールドカップ優勝以来、大きなタイトルから遠ざかっているイングランド。「期待感が高まる」と言葉で書くだけでは足りないほどのこの国の人々のフットボールへの熱狂ぶりというのは、現地に住んでみないと分からないと思います。というか、少なくとも私は英国に住むまで知りませんでした。
例えば前大会のときには、もしイングランドが優勝したら、翌日はバンク・ホリデーにして、イングランドの学校や仕事は休みにする、というアイデアまで出ていたほどです。また、やはり前大会のときには、イングランドの複数の学校で、決勝戦翌日の月曜日の登校時間を、通常より遅くしていいという決定がされました。理由は、日曜夜遅くまで試合観戦をした子どもたちに、翌日の朝寝を許可するためというのです。決勝戦を観戦することは「プライドやレジリエンスを学ぶ貴重な機会」「家族と過ごす大切な時間」と考えられてのことでした。
今回の決勝の前日、隣に住むサムは「勝つとは思えないけど、イングランドが勝ったら、飲んで騒ぐに決まっているから翌日は仕事はできない」と言っていて、その言葉は、イングランドのフットボール・ファンの複雑な心境とフットボール観戦では大騒ぎするという態度をよく表していると感じました。
「フットボールの試合がなければ、われわれはまだ戦争を続けている」というイングランドの人たちの言葉も冗談とはいえないほど、フットボールの情熱を持っている英国の人々。英国におけるフットボールの存在は、単なるスポーツの域を超えた、文化ともいえるものだと感じます。