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英国人はワインが大好き!
「これで、皆が来たときにワインが足りなくなる心配はないな!」。ワイン・ソサエティーから届いたワインの入った二つの箱を眺めて、夫が満足そうにほほ笑んでいます。その週末は、引越し完了を祝うハウス・ウォーミング・パーティーのために、義父母と義理の弟家族を招いてバーベキューをする予定でした。そのために、飲み物(主にワイン!)が不足しないよう、夫が事前に予約してあったものが届いたのでした。
ワイン・ソサエティーは、今年、設立150周年を迎えた組織で、会員になればソサエティーが勧めてくれるワインを、いつでも好きなときに好きなだけ注文することができるというシステムです。こんな組織が150年も続いているというのは、英国の人々の「ワイン愛」を証明する一つともいえそうです。
また、フランスに本部のある国際ブドウ・ワイン機構によれば、ワインの消費量は米国が世界1位で、英国は5位だといいます。英国に来る前に「英国=パブ=ビール」というイメージを抱いていた私は、ここに住むようになって、人々がかなりたくさんのワインを飲むことを知りました。もちろん、パブではエールなど、ビール類を飲む人が少なくありません。でも、渡英した当初、友人たちとレストランで食事をしたときに、ほとんどの人がワインを注文するのを見て「とりあえずビール、みたいな感覚はないのかな?」と思った記憶が今も残っています。
実際、YouGovによる2021年の調査によれば、英国内のアルコール消費者のうち、ワインを最もよく飲む人は3分の1(36%)、ビールを飲むのは10人に3人(29%)という結果がでたそうです。
さて、ワインの生産についていえば「英国料理はまずい」という常套句と同様に、「英国ではワインは作れない」という思い込みが世界中で信じられています。ところが、11世紀には英中部イーリーから南西部グロスターシャー以南の地域に、40以上のブドウ畑があり、ワインが作られていたという記録が残っているそうです。その後、社会状況や気候の変化などもあり、英国は世界中からワインを輸入、消費する大国へとシフトしていきました。一方で、地球温暖化の影響もあり、特にスパークリング・ワインは自国産のおいしいものが多く登場して、近年ではスーパーで英国産スパークリング・ワインが購入できるようにもなり、その認知度も上がってきています。
ワインのプロフェッショナルとして最も権威の高いMW(Master of Wine)の資格を発行する組織の本部はロンドンです。また、世界で最も信頼されるワイン専門雑誌の一つ、「デカンター」(Decantor)も英国発の雑誌というのを見ても、英国の人のワイン好きぶりは、世界一ではないかと感じます。