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外見への否定的コメントはご法度!?
「あんた、ちょっと太ったんと違う?それにその服、ダボダボしててヘンやな。そういうのが英国では流行りなの?日本ではみっともないんと違う?」。
結婚してすぐ、夫と初めて一緒に日本に行ったとき、母の住むマンションに着いた私を見た途端に、母が私に向かってこう言いました。
夫は日本語が流ちょうではありませんが、それでも母が私に対して「太った」と言ったのは分かったらしく、後から「娘とはいえあんなことを直接言うなんて、日本のお母さんは厳しいね!」と、冗談まじりな口調でしたが、とても驚いた様子でした。
母と私は今でも1週間に一度はLINEのビデオ電話で話をするし、日本にいたときから仲は良いほうだと思います。だから、母の言葉は決していじわるで言ったわけではなく、ただ思ったことを口に出しただけのことだったのでしょう。私自身は英国に住んで以降、体重が増加した実感もあったし、母からのこうしたコメントには慣れている(もちろん、悪気がないことも分かっている)ので、そのときはあまり気にとめていませんでした。
というのも、そもそも日本では、特に家族や友人など近しい人に対して「あれ、太った?」とか「最近、髪が薄くなったことない?」といったコメントをすることが少なくないからです。前回の一時帰国で、友人が夫について「旦那さん、ちょっと太ったことない?」と私に耳打ちしたときには、隣にいた夫に聞こえなくてよかった、と苦笑いしてしまいました。
英国で暮らしていると、日本では当たり前(?)に発せられている、ほかの人への外見へのコメントはタブーだということが分かります。だからここでは、相手が家族であっても「太った?」だなんて、絶対に口にしません。もちろん私自身、夫からそんなことを言われたことは一度もありません。
とはいえ、家族や親しい友人に聞いてみると、英国の人たちが、決してそういうことを思わないということでもないようです。つまり、ほかの人に対して、「この人、太った(痩せた)かな」「前より少し老けた感じがする」という印象を持つことはあるのです。ただ、それを相手に対して言ってはいけない、ということをしっかりとわきまえているのです。
一方で「わーすてき、よく似合ってるわ」と、他人の服装やバッグなどの持ち物、あるいは新しい髪型などを褒めることには、英国の人たちはちゅうちょがありません。というか、「褒め殺しか!」と思うほど、小さなことでも見つけて褒めてくれます。今では私も、英国の人たちから学んだこうしたマナーを真似するようにしています。