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ウィズコロナの英国
この夏、日本に一時帰国したときに驚いたのは、英国と日本とでの新型コロナウイルスへの対応の違いでした。当時、日本への入国には、外国人である夫はビザの取得が義務付けられていて、日本から私の戸籍謄本を取り寄せ、ロンドンにある日本領事館に本人が直接出向いてビザの申請をし、1週間後にまた窓口まで受領しに行かなければならないという状況でした。また、水際対策として、日本入国72時間前のテストによって、ウイルス感染陰性の証明も必要でした。家族全員の結果が陰性かどうか、テスト・センターからの通知のメールを震える手で開いたときのドキドキした気持ちは、今でも鮮明に覚えています。
空港や飛行機内は別として、すでに英国ではスーパーや多くの人が集まる屋内でもマスク着用の義務はなくなっていて、限られた人しかマスクをしていないという生活。ところが日本に到着すると、屋外での着用は条件さえ守れば義務ではない、という政府によるテレビ・コマーシャルが流れていたにもかかわらず、炎天下のディズニー・シーでさえほぼ9割以上の人が屋外でもマスク着用が当たり前でした。
夏休み中、なんとか日本での常時マスク着用義務を果たし、9月1日にヒースロー空港に戻って目を見開いたのは、空港内ですら、もうほとんどの人がマスクを着けていないことでした。右を見ても左を見てもマスクをした人たちがひしめきあっていた日本と、空港ですら誰もマスクをつけていない英国。同じ時代のこととは思えないような、まるで映画を見ているような奇妙な感覚に陥りました。
そんな両国のコロナ対策の大きな違いについてあらためて考えることになったのは、先週、とうとうわが家族も新型コロナに感染してしまったからです。3年間、まったく兆候もなかったのに、突然やってきたウイルス。子どもたちが風邪にかかったと思い込んでいたところ、続いて夫までひどい風邪の症状が出たため、外出予定のある夫が念のためにとコロナの検査をしたら陽性だったというわけです。そこで、政府のガイドラインをチェックした上で、さらに学校に確認。すると、子どもたちは3日間経過していて、症状がなければ登校可能。マスク着用の義務もなし。というわけで、週明けからは元気に通学していきました。
一方、家族中で最後にとうとう感染してしまった私。日本の家族からは「病院には行ったの?」と聞かれましたが、普段でも、よほど重症でないかぎり病院には行かないのが英国暮らし。パラセタモールと呼ばれる解熱鎮痛薬を飲んでおとなしく静養しています。コラムを読んでくださっている皆さんは、くれぐれもご注意くださいませ。