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ベッドで朝食を
「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー、マミィ!」
2年前の誕生日の朝、子どもたちが、バースデー・ソングを歌いながら、ベッド・ルームに入ってきました。手には、画用紙で作って本物そっくりに色塗られたソーセージや卵が紙皿に載ったイングリッシュ・ブレックファストを持っています。「お誕生日、おめでとう。はい、おいしいご飯を食べてね」。そう言われて、ベッドの背にもたれながら、その朝食をむしゃむしゃ食べる真似をしました。
ベッドの中で朝ごはんを食べることを、英国では「ブレックファスト・イン・ベッド」と言います。そう、そんな正式(?)な呼び方があるほど、誰もが知っているし、多分、多くの人が体験したことのある行為です。
とはいえ、これをするのは、毎日というわけではありません。私が子どもたちにしてもらったように(普通は紙製ではなく、本物の食事が出てきます。念のため)誕生日や日曜の朝、また母の日などに、ご褒美(プレゼント)として、誰か(たいていは家族)に朝ごはんを用意してもらうというのが一般的です。
特に母の日のプレゼントとしての実施率は高いようです。というのも、母の日が近くなると、雑誌や各種ウェブサイトなどでは「お母さんを喜ばせるブレックファスト・イン・ベッド・レシピ・ベスト20」といった特集があちこちで目につくようになるのです。子どもたちのご飯やお弁当の準備や学校の送り迎えなど、日々、朝から多忙なお母さんにとって、母の日くらいはゆっくり朝寝坊したい、というのが、何よりの願いなのかもしれません(もちろん、お父さんもそうだとは思いますが)。
日本でも人気のテレビ・ドラマ「ダウントン・アビー」では、しばしば、この「ブレックファスト・イン・ベッド」の場面が登場していましたが、覚えていますか。
30センチほどの高さの足付きトレーには、紅茶セット一式と共に、銀製のトースト・ラックに立てかけられたトースト、そしてマーマレードなどが入ったジャムの器。それに、ゆで卵などが並んでいました。グランサム伯爵夫人コーラや長女のメアリーが、ベッドに座ったまま、それを優雅に食べているのを見て、日本では考えられないと思った方もいたかもしれませんね。
以前、日本から友人が訪ねてきてくれたとき、朝、部屋まで紅茶とトーストを運んでいくと、とても喜んでくれました。その後、この「ブレックファスト・イン・ベッド」の話をしてみました。すると友人は「でも、それって日本だと病院で入院しているときの食事のイメージかもね」と一言。
英国ではうれしいはずのベッドでの朝ごはんも、日本ではちょっと違った意味合いになってしまうのかもしれません。