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Unexpectedな英国鉄道
「また電車が遅れているよね!!」「そうだね、でも、あと20分くらいで来るみたいだよ」
15年ほど前、当時住んでいたグリニッジの駅のホームで、ロンドン・ブリッジ行きの列車を夫と待っていたときの会話です。
日本では「列車は定刻に到発着するのがあたりまえ」。でも、英国では「列車が定刻に発車、到着すればラッキー!」なのは、在英の皆さんの共通認識ですよね?今なら私もそう思えます。でも、それなりに英国暮らしに慣れてきていたとはいえ、当時の私はまだまだ日本の「時間厳守、お客さまは神様」といった思考を根強く持っていました。
そのせいか、すでに20分以上も遅れている列車にイライラが募っていました。と、そのとき、列車の行き先と到着時刻を知らせる電光掲示を何度も見ていたら気付いたことが。「ねえ、なんで『Expected』っていうのがあるの?」時間つぶしに本を読んでいる隣の夫に質問しました。
というのも、掲示板の左上には定刻をあらわす「Time」、真ん中は、行き先、そして右端には「Expected」の文字が書かれています。どうやらこれは、今の時点で、実際に列車がこの駅に到着する予定時間を表しているよう。そして、見ていると、「Expected」の部分が定刻の20分遅れの時間から25分遅れの時間に変わりました。そしてしまいには、「Delayed(遅延)」との表示。つまり、一体この駅に何時に列車が到着するのかの見当すらつかなくなりました。
「だいたい掲示板に『Expected』ていうのを作る時点で、定刻に列車を走らせようという意識が欠けているんじゃないの?」夫のせいではないのに、ついつい悪態をつく私。「そんなこと、考えたこともなかったよ」夫はぽかんとしていました。
ほかにも驚いたのが、ロンドンなど大都市のターミナル駅で、発車ギリギリまで列車のホームが掲示されないこと。キャリー・バッグを持った人、ベビーカーを押すお母さん、ビジネスマンなど、みんながアリのように群がって大きな電光掲示板を凝視しているのに、出発予定時刻5分前になってもホームのところは空白状態。そして、3分前にようやく番号が掲示されると、まるでロンドン・マラソンのスタートのピストルが鳴ったかのように猛ダッシュで改札に駆け寄る人々。高齢者や幼い子ども連れの人がちゃんと列車に間に合うのだろうかと、自分もホームを小走りしながらいつも気にせずにはいられません。
世界で初めて蒸気機関車を走らせ、19世紀から20世紀初頭には鉄道の発達を牽引してきた英国。でも、その実態は、日本からやってきた私とって、かなりUnexpectedなものでした。