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Fri, 15 December 2017

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第28回 日本留学のススメ

日本人家庭である私たちが英国に移住して10年目に、当時17歳の息子と決めた「日英の大学同時受験」。幸い日本の大学でも英語で学べる学位コースが設置され始め、その審査方法も英国と変わらず、海外で育った日系の子女にとっては大変ありがたい選択肢が増えた時期でした。

息子のAレベル(大学入学資格試験)発表の日、幸いにも第一志望だった英国有数の名門大学からのオファーが、大学入学サービス機関UCASのオンライン画面上に映し出された瞬間は、大学受験の長くて暗いトンネルを抜けたようなうれしさに包まれました。しかし問題は、既に合格通知を手にしていた日本の大学にするか、英国の大学にするかの選択でした。

親の立場でも決めかねていたこの難しい選択に対して、息子は「日本の大学へ行く」と即決。聞けば、「授業料、安いから」との回答に「ん~、そんなものかなぁ……」と、拍子抜けしてしまいました。

確かに息子が大学進学する前年度から、英国の大学授業料は年間9000ポンドに跳ね上がり、生活費も加算すると、卒業時にはおよそ5万ポンド前後の「借金」を抱えて社会に出る計算になりました。

他方、日本の大学は、英国と同じく国立大学に限定すると、海外からの留学生には様々な給付型奨学金が用意されていました。息子の場合も、4年間の授業料に加え、後半の2年間は生活費分の奨学金も大学から得ることができ、親の負担も本人の借金もゼロで卒業に至ることができました。

なぜ当時、ここまで留学生が優遇されたかというと、この英語での学位コースの留学生たちは、いわば国内の学生たちに刺激を与えるための起爆剤としての役割を担っていたからです。もともと国が支援し、文部科学省が実施した「国際化拠点整備事業(グローバル30)*」と称された大学支援事業の一環で、そのコンセプトにも「留学生等に魅力的な教育を提供し、留学生と切磋琢磨する環境の中で国際的に活躍できる人材の育成を図るため、海外の学生が我が国に留学しやすい環境を提供する**」と明記されていました。

そのため、採択された大学は日本国内トップ13大学のみで、その留学生の質や教育水準などは厳しく審査・監督されました。クラス規模も20~30名と限られ、日本語の同類学部のゼミへの参加や、日本人学生が英語コースに参加するパターンなど、様々な共同授業や研究が用意。もちろん学生側も、海外の大学と変わらないと言える程、レポート作成などに追われましたし、更に奨学金獲得のためには、常に優秀な成績を維持することが必須だったようです。

また留学生の出身国もバラエティーに富んでいたため、日本人学生が海外留学生と上手にコミュニケーションを取るにはどうすべきかなど、様々な文化の違い、言葉の違いを乗り越える方法を見出だす作業を、大学という場が提供しているようにも感じ取れました。現在、日本ではアジアからの学生の不法就労が問題となっていますが、息子の場合は、こうした現実とはかなり離れた、理想的な大学生活を送ることができたようです。

* 文部科学省による「グローバル30」支援は2013年で終了していますが、各大学により本事業は継続され、学生募集も行われています

** 文部科学省「グローバル30とは」より

 
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小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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