ロンドンのゲストハウス
Sat, 25 November 2017

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第27回 大学受験 ― 揺れる親心

海外で暮らす日本人家族や、国際結婚して子供を現地で育てている日本人にとって、我が子が将来、どこの国に軸足を置いて生きてゆくかという、国際児だからこその悩みに遭遇することもあると思います。

特に我が家の場合は、先日ノーベル文学賞の受賞が決まったカズオ・イシグロ氏ではありませんが、日本人家族であり、息子は現地校ではマイノリティー。社会に出れば移民2世の一人であることは変わらない事実です。良かれ悪かれ、日本の社会では経験することのない事柄で悩むこともあるでしょう。

息子の大学受験時はまだ、どちらの国の大学へ進学するか、本人も私たち親自身も決めかねていたのに加え、親のわがままで英国に移住させてしまった以上、将来の活躍の場を英国一択にしては申し訳ないという思いもありました。そこでとりあえずの目標を「日英の大学同時受験」と決めたのです。

幸い、息子が大学受験を目指す時期に、「グローバル30」という、日本の文部科学省が実施する国際化拠点整備事業が行われていました。これは、日本が2020年をめどに30万人の留学生受け入れを目指す「留学生30万人計画」の一環で、受験方式も受験生が育った国と同様の審査方式、更に大学の授業も英語で行われる、日本語がおぼつかない我が子のような海外育ちの子供にとっては、非常にありがたいシステムでした。

当時の受験内容は、GCSEとAレベルの試験結果に加え、志望理由をまとめたエッセイ、更に日本の大学ではスカイプによる英語面接(具体的には複数の外国人教授による専門的な設問に答えるもの)でした。こうした日本の大学の国際化を目指す改革に、大きな恩恵を感じたのは言うまでもありません。

近年、日本でもよく話題になる大学の国際ランキングで言えば、上位に位置するのは英国の大学の方がはるかに多く、(もし大学と就職が密接に関係するのであれば)将来的にも英国で学んだ方が良いのかもしれません。しかし、我が家のように言わば「親の都合」のみで息子が日本で教育を受ける機会をなくしてしまった以上、「日本での学び」の最後のチャンスが大学だったのです。

もし英国での就職を希望するのであれば、大学も英国が良いのでしょうが、日本でとなった場合、それが有利になるとは限りません。また日本特有の文化や生活様式になじめるかという点も、大学だからこそ「実験的に」試すことが許されるのではないか。当時はそんなことも考えました。

加えて、教養課程の2年間を経て専門課程を学ぶことの多い日本の大学と、いきなり専門性の高い3年課程に進む英国の大学、その授業方針や学生生活の違いも大きく、子も親もどちらにすべきか、悩み揺れ動いた時期でした。

息子
英国の大学のオープン・キャンパスに向かう息子

 

 
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小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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