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Sat, 24 August 2019

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第09回 驚きの英国初等教育現場(その2)

日本と英国の公立校における初等教育の現場を比べると、その違いに驚くことばかりですが、特に教師の労働環境が保護者の目から見ても日本とは大きく異なることが分かります。

第一に感じた大きな違いは、英国の小学校には日本の学校にあるような「職員室と職員机」がないことでした。あるのはブレイクタイム(大概は午前中の授業の間にある20分ほどの休憩時間)とランチタイムに集う教員専用の部屋。そこには各自の事務机などはなく、大きなソファとティー・テーブル、そしてお茶を入れるための給湯所と、紅茶・コーヒー用のミルクや砂糖、ランチに持参したサラダやヨーグルトなどを冷やしておくための冷蔵庫、学校によっては電子レンジやオーブンといったミニ・キッチンを備えた、いわば休憩のための大部屋です。

クラスを担任している先生は、教室内に教師用の机を持っていますが、日本の職員机に見られるような「書類の山」などはあまり見かけません。放課後も授業が終われば、児童を保護者に引き渡すと同時に、自分たちも帰途につきます。

息子が通っていた小学校は、全校生徒100名に満たない小規模校でしたので、最初のうちは「分校のような学校だからかしら?」と不思議に思っていたのですが、日本文化を紹介するワークショップ開催のために英国内にある何十校もの様々な学校へ赴いた際にも、やはり日本のような「職員室」は、どこでも見たことがありませんでした。

ワークショップの合間に案内されるのは、どこも客間さながらのソファが置かれ、そこにちょっと窮屈そうに何人もの先生たちが、マグカップとビスケットを手にしながら、ひとときのブレイクタイムに楽しそうにおしゃべりをしている大部屋ばかり。日本の学校には存在しない、先生がくつろぐ空間と、わずかながらもリラックスしながらお互いにコミュニケーションをとる時間があり、同じ教師の労働環境でも日本と英国では随分と異なるものだと感じました。

英国では現在、教師の離職率が高く、また教師を希望する若者たちも減っているという傾向があり、その人材不足が社会問題となっていますが、日本の教師の激務に比べれば、ずっと羨ましい環境がそこにはあるように思います。なによりも先生方一人ひとりに「生活者としての心の余裕」が感じ取ることができ、「教師」という前に一個の魅力ある人間性を強く感じました。

「この余裕はどこから生まれるのか」。その疑問の答えは、息子の現地校での日々を積み重ねるごとに、少しずつ見出すことになりました。つまりそれはただ単に「職員室がない」ことだけにとどまらない、様々な要因があったのです。

お別れパーティー
英国式「職員室」でのランチタイム。この日は25年勤務された先生のお別れパーティーがあるので、足元にはプレゼントが

 
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小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
英国王室流教育の極意: エリザベス女王からジョージ王子まで(河出書房新社)英国王室流教育の極意ビクトリア女王からジョージ王子まで、英国王室の子育てや教育を語る一冊。憧れのプリンス、プリンセスが受けた教育とは? 英国のパブリック・スクールや筆者が体験した公立校の教育システム及びその現状が網羅されている。
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