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Fri, 06 December 2019
三澤茂計甲州ワインを生産する「グレイスワイン」社長
三澤茂計さん

[ 前編 ] 「海外から高い評価を受ける日本文化」と聞けば、まず着物や和食といった日本の伝統文化を思い浮かべるかもしれない。だが、西洋の食文化に深く根差したワインの世界においても、海外展開を実現している日本人がいる。ロンドンを足掛かりとして欧州進出に乗り出した甲州ワインの生産者たちの思いとは。全2回の前編。
プロフィール
みさわしげかず - 1948年9月14日生まれ、山梨県甲州市出身。甲州ワインのブランドの一つである「グレイスワイン」を展開する中央葡萄酒株式会社代表取締役社長。仏海軍への納入などの実績を残してきた同社の4代目として様々な改革に着手。83年には国内初となる原産地認証ワインの醸造を開始。2009年に甲州ワインの海外展開を目的とする自主的団体である甲州オブジャパン(KOJ)を設立。14年6月にロンドンで開催された「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」では、同社の「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が日本初となる金賞と、15ポンド以上のアジア地域カテゴリーで最高賞となるリージョナル・トロフィーを受賞した。
www.grace-wine.com

 

日本の国産ワインであることの意義

2014年の6月下旬。テニスのウィンブルドン選手権に出場した日本の錦織圭選手や伊達公子選手らの活躍ぶりが新聞のスポーツ面で報じられていたころ、ロンドンで開催された別の世界大会でも「日本代表」が偉業を達成していた。その大会とは、世界中から集められた優秀なワインを表彰する「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」。エントリーする銘柄は実に1万5000本、200人以上の審査員によって厳格な審査が行われるこの大会で、中央葡萄酒が生産する甲州ワイン「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が、日本初となる金賞を受賞。さらには、15ポンド以上のアジア地域カテゴリーにおいて最高賞となるリージョナル・トロフィーも獲得した。同社の三澤社長は「アワードの受賞以来、海外向けに大量の商品を割り当てることになりました。すごい影響力でしたよ」と振り返る。

「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2014」の賞状とボトル「Dressed to Impress: netsuke and Japanese men's fashion」
「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2014」の賞状と
「キュヴェ三澤 明野甲州2013」のボトル

甲州ワインとは、文字通り、主に日本の山梨県甲州市で栽培されている固有種の甲州ブドウを使って醸造された白ワインを指す。「バランスの良い酸味が心地良く、クリーンで繊細、かつフレッシュ感がある」味わいが特徴で、日本の国産ワインとしては最も名の知られているブランドの一つだ。日本では長らく、ワインと言えば「海外のお酒」を意味していた。現在でも日本国内では輸入ワインの消費量が多く、国産ワインのシェアは3分の1。しかもそれら国産ワインは、実は海外から輸入した濃縮ブドウジュースを加工したり、輸入ワインとブレンドしたりして造られたものがほとんどで、国内で収穫されたブドウを使ったものは全体の1割に満たないという。山梨県固有の甲州ブドウを原料として国内で醸造された中央葡萄酒の甲州ワインは、正真正銘の日本国産ワインとして非常にユニークな存在と言える。

さらに、海外へと輸出する日本の国産ワインとなると極めて稀。中央葡萄酒では生産量全体の7%を輸出しているが、「日本で5%以上を海外に出荷している生産者はたぶんいない」とは三澤社長の弁。そうした状況下で、甲州ワインの造り手たちはなぜ海外展開へと目を向け出したのだろうか。

草の根運動からロンドン進出へ

一つに、国際競争にさらされることで品質を向上させるという狙いがあったという。「10年前の時点では、甲州ワインは海外で評価されるレベルにはなかったと思いますよ。一部のコンクールで入賞することはありましたが、海外市場にはほとんど出ていなかったわけですから」。海外進出に乗り出したことで、世界中のワイン文化に慣れ親しんだ人々の肥えた舌をも満足させようと、例えば「味わいの中で果実の香りを出す」ための工夫などに、より一層注力するようになった。また海外に出れば競争が激しくなるが、当然ながら市場も大きくなる。「ブドウの栽培面積からして、フランスやスペインといったワイン大国と比べると我々のブドウ畑は見劣りしてしまいます。そうした事実と向き合っているうちに、適正な判断を下してくれる広い市場において甲州ワインを評価してもらいたいという気持ちが強くなっていったのです」。

甲州ブドウ
収穫を待つ甲州ブドウ。甲州ワインの主原料となる

2009年には、志を同じくする甲州ワインの生産者たちを集めた「甲州オブジャパン(KOJ)」を設立した。草の根運動のような形で始まったこの団体は、世界進出の拠点と定めたロンドンでの展開を開始。英王室御用達のデパートとして知られるセルフリッジズや大手スーパーのマークス・アンド・スペンサーなどの商品棚にも甲州ワインが並ぶようになった。そして、今年に入ってのアワード受賞。その裏では、甲州ワインをめぐって様々な変化が起きていた。

 
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