英国の内務省は、2月26日、英国への移民に発給される滞在許可に関連した一連の変更措置を発表しました。発表内容には在英邦人にも影響を与え得る変更事項が多く含まれているので注意が必要です。今回はこれらの変更点の概要をお伝えいたします。
● 申請が拒否された場合のアピール
2015年4月6日以降は、英国への滞在許可の申請または延長が拒否された場合に、アピールを行うことができなくなりました。代わって、事務処理上の誤りを理由として申請が拒否された場合には、今後は不服審査(Administrative Review)と呼ばれる手続きを経る必要があります。また一部の事例については、司法審査において審査が行われます。
● 英語能力証明テスト
英国での滞在許可を申請する上で一定の英語能力を持つことを証明するために求められる書類は、4月6日以降、①英語で履修した修士または博士課程の修了証、②正式に認可された会場で実施されたIELTSの試験結果、③英国内で実施された、試験機関「トリニティ・カレッジ・ロンドン」が管轄する英語試験の試験結果、のみに限定されます。上記3種類のいずれにも相当しないものの、従来は内務省によって証明手段として認められてきた試験を4月5日までに受けた場合には、11月5日までその試験結果を証明書類として使用できます。
● Tier1(起業家ビザ)
英国で起業することを計画している人々を対象として発給されるのが、「起業家ビザ」です。同ビザでは、①初回申請時、②延長または同カテゴリーを経由しての永住権申請時、のそれぞれに対して異なる変更が発表されました。
① 初回申請時
自己資金を申請時に至るまでの90日間以上維持できなかった場合、今後は申請者に対して資金を提供した第三者の身元を明らかにする必要があります。またこれまで必須ではありませんでしたが、事業計画書(ビジネス・プラン)の提出も義務付けられるようになりました。
② 延長または同カテゴリーを経由しての永住権申請時
これまで初回申請時のみを対象としていた、正真正銘の起業家であることを証明するテストが、延長または同カテゴリーを経由しての永住権申請時にも適用されることになりました。同テストにおいては、追加の書類提出また場合によっては面接などを通じて、申請者が起業家として活動してきたことを証明するよう求められます。
● Tier2
いわゆる就労ビザに相当するのが、Tier2というカテゴリーにおける滞在許可です。このカテゴリーでの申請に必須となるスポンサーシップ証明が4月6日以降に発行された場合、各サブカテゴリー(General、Intra-Company Transferほか)に設定された最低給与額が引き上げになると発表されました。またこれとは別に職種別の最低給与額も引き上げとなり、このうちどちらか金額の高い方が適用されるのでご注意ください。
今回発表された内容には、ほかにも細部にわたる様々な変更が記されています。滞在許可の取得及び延長を申請する際には、これらの変更内容を踏まえた上で資料をそろえたり、面接に向けての準備を行ったりする必要があります。せっかくの機会をふいにしないよう、できるだけ早い段階で準備を開始し、申請手続きは専門家と二人三脚で着実に進めることをお勧めします。
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