外国企業による不動産買収
外国企業が国内不動産を買うことに伴うトラブルについての新聞記事が目立つ。3月には韓国企業によるマダガスカルの農地買収に地元民が反発、クーデターの原因の一つになった。中国やアラブ諸国は、自国向け輸出を企図してアフリカの農地の買収を進めており、食料の安全保障が金融市場や政府で議論されている。
日本でも対馬にある自衛隊基地の近隣地を韓国企業が買収、同国人向けのホテルが建設されており、社会問題になっている。日本の不動産業者が米ニューヨークの著名なビルを買収したときも、同国のマスコミは「米国自体が買われる」と騒いだ。中国資本が日本の企業や土地を買収しに来ることは時間の問題だろう。
この点、空港運営最大手BBAがスペインの会社、ガスなどインフラは欧州大陸の会社という例に見られるように、英国は投資歓迎のスタンスを持つ先進国である。一方、米国は港湾の運営会社をアラブ首長国連邦の国営投資会社が買うことに難色を示した。日本人もこうした問題についてどう考えるか、頭を整理しておくべきである。
外国企業による買収は問題か
巨大クリスマス・ツリーで有名なロック
フェラー・センター。日本企業が買収した際
には米国民の反発を買った。(写真:共同)
自由貿易が制限されてブロック経済になれば、こうした外国企業による不動産の買収問題は現実的になろう。しかしその時は、ベネズエラのチャベス大統領のように一旦外国企業に買収された土地や企業を、国家の強権を発動して格安で国有化することになるであろうから、むしろ問題は、ブロック経済化の可能性と自国のエネルギーや食料生産の自給率になる。
軍事的な問題も、技術進歩により土地自体が問題になる余地は小さいのではないか。ステルス戦闘機は垂直離発着する。軍港になりやすい天然の良港の近隣地は、機密保持のために国家に買収されることが多く、代替性がないので、問題になり得るが。そうであれば外国からの投資を制限して、国土の発展や雇用の拡大を制限するよりは、投資を歓迎しつつ、土地利用のディスクロージャーや生産物の流通促進のための規制緩和をする方が経済に資する。
発展途上国の土地買収の前提
英国のヒースロー空港はスペイン企業の
BBAによって運営されている
(2009年6月8日脱稿)
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