事件を起こしたのは牛だった
さて、ロンドンの警察官が忙しい毎日を送っている間、スコットランド南部の田舎町ガラシエルズでは、ある1人の警官が表彰を受けていた。彼の功績とは、地元市民の人命救助。そしてその市民の命を奪おうとした犯人とは、なんと牛である。
事件そのものが発生したのは、今から1年半程前。町内の農家から、大きな角を生やした牛が逃げ出した。なんでも、農家の人が手をかけようとした瞬間、怒り狂った牛が小屋を飛び出して、市道に向かって走り出してしまったんだという。
この騒ぎを聞きつけた地元の警官数名がさっそく現場に駆けつけたところで、勝負開始のゴングが鳴った。警察チームは何とかこの牛を捕獲しようと乗用ワゴン車で追い掛け回すが、牛は角で車に体当たりをするなどして応戦。これに負けじと警察は、とある小さな庭の中にまで牛を追い込んだ。
だが、ここでさらなるトラブル発生。この庭の生垣の向こう側から、騒ぎを観戦していた老人がいたのだ。しかも問題の牛は庭の柵を超えて、老人に向かって突進。ご老人にとってはまさに絶対絶命のピンチが到来した。
ここで登場となったのが、デレック・ターンブル警官である。勢いよく飛び出した彼は、すぐさまその老人を抱きかかえながら生垣を超えて避難に成功。その間に彼の同僚が車で牛をコーナーに追い込み、見事捕獲した。そして地元警察は今年になって「自らの命を顧みず人命を救助したことは特筆に価する」と表彰することを決定したというわけ。
ちなみにこのターンブル警官、実はかつてスコットランドのラグビー代表を務めていたほどの運動神経の持ち主で、しかも農家育ち。彼の「牛なんか恐るるに足らず」とのコメントに、地方警官のたくましさを感じるではないか。ターンブル警官とガラシエルズ市民に幸あれ。
「BBC Online News」
"Policeman tackled 'enraged' bull"
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