パリ郊外にあるベルサイユ宮殿の見所のひとつ「鏡の間」が、約3年の修復作業を終えて6月27日から一般公開されている。ベルサイユ宮殿は1682年、民衆の反乱に苦しんだルイ14世が、パリから南西22キロに位置するイヴリーヌ県ヴェルサイユに遷都し、建設した宮殿だ。かつてはフランス絶対王政の象徴的な建造物であった同宮殿だが、いまではルーブル宮殿、エッフェル塔に次ぐ人気の観光スポットとなっており、ここ最近では、ソフィア・コッポラ監督の映画「マリーアントワネット」の影響もあってか、連日長蛇の列ができている。
「鏡の間」は、庭園に面する17枚の大窓から差し込む光を、357枚の鏡が巧妙に反射させて回廊全体を照らす、宮殿の目玉スポット。6月25日付の新聞には「3年の修復工事を終え、27日よりついに甦る!」などと報道されたが、実は今年の2月からすでに「鏡の間」には一般客がアクセス可能だったというのはご存じだろうか?
なんてことはない、当初は今年の2月には修復作業が終了する予定だったのだが、結局間に合わず、修復機材が山積みとなったままの状態で公開を始めたのだ。でも、それでは具合が悪いので、2月の報道では「5月に一般公開予定」としていた。だが、実際に修復が完了したのはそれからさらに1カ月も遅れたつい先日のことだったというわけ。まるで修復工事の遅れなどなかったかのように報道されるあたり、まさにフランス流といったところだろう。
ルイ14世時代には、「鏡の間」にはたくさんの銀製品が飾られていたらしいが、これらはスペインとの王位継承争いが続いた晩年には、戦費捻出のために全て売られてしまったという。今回、「鏡の間」の修復にかかった費用は、およそ1200万ユーロ(約20億円)。60人の技術者が鏡や大理石、ブロンズの修復に当たったほか、アーチ型天井に描かれた絵画などは赤外線写真を用いて後代の修復部分を取り除き、元の作品に近い状態まで修復したという。ユーロ高が続くこの時期、修復費の回収が追いつかなくなって、せっかく甦らせた「鏡の間」の美術品を売る羽目にでもならなければ良いのだが。
「Figaro」紙など
“Pleins feux sur la galerie des Glaces”
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